満足度★★★★
枠と回転に捕われた人々
枠から逃れられず、その中を回り続ける人間の滑稽な姿を、アクロバット・ダンス・芝居・歌を用いて象徴的に描いた作品で、洒落たセンスが魅力的でした。
田の字型に4部屋に区切られた回転する装置をメインに展開し、他のセットや小道具も枠と回転がモチーフとなっていてバラエティー豊かな中にも統一感がありました。
高度な身体技能を用いつつもそれを誇示しないでユーモラスに見せるアクロバティックなシーンもあれば、「Hi」「Wao」「Aha」の3つだけで強引に会話したり、暴走するインストラクターによるヨガ教室等、ナンセンスなコントの様なシーンもあり、緩い雰囲気がチャーミングな群舞シーンもあり、引き出しの多さが印象的でした。出演者7人のキャラクターがそれぞれ際立っていて、しかも突如始まる歌が妙に上手いのが楽しかったです。
コミカルな雰囲気が支配的ですが、終盤は音楽と照明回り続ける部屋の中に静かに佇む人達の姿に何とも言えない寂寥感が漂っていて、切なく美しかったです。
舞台下手にDJブースが設えてあって、既成の音源や劇場内で発生している物音をエディットして演奏していたのが、作品のライブ感を高めていて効果的でした。
照明も派手さは無いものの、巧みに視線を誘導してイリュージョンを生み出していて素晴らしかったです。