フリージアの不可知論 公演情報 劇団霞座「フリージアの不可知論」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    地獄に生まれた詩
     この公演の後、霞座は暫く冬眠に入ると言う。冬籠り前の今作、力作である。いつも思うのだが、この劇団の作品は極めて詩的である。今作も、扱われているのは、紛争地の現実なので頗る厳しい状況が描かれ乍ら、同時に適度な抽象度を保ちあまつさえ詩のテイストを具えている所にこの劇団の特徴と良さがあるように思う。言い換えれば追求すべきものを追求し振り返らないという潔さを持っているということだろうか。恰も己の宿命を知る者のように。

    ネタバレBOX

     戦争というものが、人間にとって何を意味するのか? それを東西ドイツやパレスチナ・イスラエル問題など紛争地の各々から取り出し、少年兵、外国人傭兵などに具体化して、戦場の実体を点描・透視する。絶え間なく変わる支配地域の中で、その時優勢な勢力に肩入れせざるを得ない民衆の多くと、肩入れした後の他の人々との運命、民衆の中でも自説を通した人々と折れた人々の間に生まれる齟齬。昨日迄の隣人が今日は敵となって殺し合い、できれば当たらないでくれと願いながら互いの陣地に向けて乱射するリアリティー。数々の混乱。纂奪やレイプ、暴力と虐殺で民衆を従わせようとしている兵士たち。その兵士たちに向けられた武器の前での民衆の選択、等々。一瞬と雖も気の休まる時も無い中で、戦闘を休止させる程の突然の豪雨。その雨をずぶ濡れになって受けながら、恰も、戦場の惨たらしい体験が、悪夢でしかないように思われる一時。ゲリラが潜むとされた村に突撃した戦士に家族を目の前で殺された子供が、襲撃してきた兵士が落ち着いてから、固いパンを分けて貰い、神の祝福の言葉と共に受け取った時の兵士の衝撃等々が、頗る高いテンションでぶつかり合い、乱反射する詩的な作品だ。

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    2014/03/17 02:11

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