感想
柄谷行人が「新しい哲学」という作品の中で、次のように述べている。「一般に人間の自己回復の欲求は幻想的にしか実現されない、少くとも僕らの短い生涯のことを考えるなら。宗教や芸術の根拠はそこにあり、(後略)」劇団 東京SaVanna T's の「夜明けとともに目が覚める」(作・演出 バブルムラマツ)が4年ぶりに再演された。あくまで一般人としての鑑賞であるが、改めて演劇(文学)の持つ不思議な力を感じた。それは簡単に言うと、社会的弱者の持つ人間らしさ、そして真実を、圧倒的な形で見せてくれる力である。私たちの生活、社会、世界は日々非人間化している。肉体としての人間を回復させるのは医学であり医療であるだろう。そして精神としての人間を回復させる数少ないものの一つが、演劇であれ文学であれ音楽であれ絵画であれ、この種の芸術なのだろうと思われた一日だった。