かもめ~21世紀になり全面化しつつある中二病は何によって癒されるのか、あるいはついに癒しえないのか、に関する一考察~ 公演情報 アロッタファジャイナ「かもめ~21世紀になり全面化しつつある中二病は何によって癒されるのか、あるいはついに癒しえないのか、に関する一考察~」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    中二病なう
    Aチーム観劇。
    自意識、自己愛の突出する思春期を指す“中二病”という視点が新鮮。
    登場人物を3組のカップルにしぼり、それぞれ“中二病なう”、“中二病こじらせ型”
    “中二病達人”の3様を鮮やかに見せる。
    15歳の宇野愛海さんが初々しく、まさに中二病現在進行形かと思わせるあたり
    計算された演出ともとれるが、リアルにみずみずしい舞台となった。
    その反面、若さゆえか浅さも見られたが、第4幕最後のニーナは熱演だった。

    ネタバレBOX

    演技スペースを3方から客席が囲んでいる。
    コンクリートむき出しの床に白い布で覆われたソファ、同じく小さな椅子、
    客席横の階段手すりも白い紙でくるまれている。

    古い形式を否定し、新しい演劇を創るのだと息巻くトレープレフ(内田明)。
    大女優アルカージナ(辻しのぶ)を母に持ち、
    その愛人は人気作家のトリゴーリン(石原尚大)である。
    若く美しいニーナ(宇野愛海)を主役にトレープレフは新作を披露するが
    母はハナから小馬鹿にしてまともに観ようともしない。
    愛するニーナもトリゴーリンに奪われ、トレープレフは屈辱と怒りと憎しみに狂う。
    トレープレフを愛するマーシャ(香元雅妃)は、思いを断ち切るように
    自分を思い続けてくれたメドヴェージェンコ(宮本行)と結婚する。
    4年後に弄ばれたかもめが帰ってきた時、絶望したトレープレフは拳銃自殺する…。

    という昼メロみたいな「かもめ」だが
    登場人物が3組のカップルだけというシンプルな作りで骨格がくっきりした感じ。
    「中二病にでもならなきゃ恋愛なんてできないぜ」というメッセージが
    込められていたかどうかは不明だが、
    臆病かストーカーかという極端なケースに走りがちな昨今の恋愛事情とは裏腹に
    “恋愛コミュニケーションとその手腕”を観た思いがする。

    トレープレフとニーナ 「中二病なう」
    まだ自分を客観視出来ない、実力も把握していないにもかかわらず
    他人の才能を批判することだけはいっちょ前なトレープレフ。
    ちょっと自分を悲劇のヒーローにし過ぎている嫌いはあるが
    マザコン全開でわからんじんの草食系っぽさが良く出ていたと思う。
    ニーナ演じる宇野さんがリアルタイムで経験値の少ない方だから
    そこはリアルなのだが、素で勝負するには他が濃いだけにちょっと弱いかな。
    4幕で村に戻って来た所は頑張っていたけど、今15歳の宇野さんが
    もう少し大人になった時の崩れたニーナを観てみたいと思った。

    マーシャとメドヴェージェンコ 「中二病こじらせ型」
    自分の事は解っているつもりで、実は解っていない中途半端なお年頃。
    頭で解って行動しても、気持ちがついて行かなくて空中分解するマーシャと
    全部解って結婚したくせにやっぱりそれじゃいやだよう、と
    トレープレフにあたり散らすメドヴェージェンコの仮面夫婦が上手い。
    感情表現がさらりとした手触りのマーシャに対して
    ねちねち陰湿で嫌味なメドヴェージェンコの組み合わせも良いバランス。

    アルカージナとトリゴーリン 「中二病達人」
    つまりは相手を翻弄するようになって初めて一人前なのだという貫禄のカップル。
    欲しい物は馬乗りになって首絞めんばかりになってでも引き留める女王様。
    彼女の言いなりになっているようで実はちゃっかり若いニーナもモノにするおじさん。
    飽きたら捨ててまた女王様の元へ戻るあたり、大したもんださすがちょい悪オヤジ。
    いい年して、ここぞと言う時には中二病を引っ張り出して己を鼓舞し、
    純粋な情熱と言う名の下に好き放題しちゃう都合のよいカンフル剤として使う。
    若いもんが敵うわけないわ。

    という大人への階段がとても良く俯瞰出来て大変面白かった。
    中二病の克服には恋の挫折と恋の成就、きっと両方必要なのかもしれない。

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    2014/03/01 02:41

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