許して欲しいの 公演情報 劇団競泳水着「許して欲しいの」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    作家脳と役者脳で紡がれる異なるおもしろさ
    週末2日間で両バージョンを拝見。
    作家Ve(土)r⇒役者Ver(日)の順で観劇

    それぞれの舞台に描かれる刹那を追わせる力を感じつつ、戯曲から紡ぎ出される同じ顛末の、異なる肌触りや垣間見えるものも実に面白かったです。

    ネタバレBOX

    作家Ver.のキャストたちは手練れの作家・演出家でもあり、舞台で彼らが自らの作品を演じる姿は何度も観ていて役者としての秀逸さも十分承知。
    また、戯曲にはいろいろ役者への当て書きを感じるような部分もあり、作品の構造をその作・演脳でしっかりと掌に載せているなぁと感じる部分も随所にあって。
    要所でのキャラクターたちへ絶妙なバイアスを掛け物語の骨格を組み上げつつ、表層のロールの変化を踏み台にして次第に作家や編集者たちの何かを創造し形にしていくことへのスタンスや苦悩や矜持を切り出していきます。
    いろんな遊び心やウィットも差し挟まれつつ、キャラクター達が抱くものがきっちりと貫かれ、物語の顛末を踏み台にして描き出すものを支えて。その中で役者それぞれに、自身の作品の中では観たことのない質感の演技の引き出しを引いているのも興味深い。上野作劇をしなやかに纏うために、それぞれの役者としての底力がうまく導きだされていたようにも感じました。

    一方役者Ver.は、ひとつずつの刹那を実直に積み上げ物語の流れを作っていく感じ。刹那ごとの空気がとても繊細に編まれ、自然な肌触りをもって舞台を満たしていく。
    シーンごとのロールの雰囲気の変化も、作家Ver.よりもゆっくりと広がりをもって伝わって来る感じがあり、作家Ver.では物語から切り出されていた何かを描き出すことへの様々なことも、物語の内側にしなやかに織り入れられて、舞台の呼吸のように訪れる。上野作劇ならではの、どこか淡々とでも観る側を捉えて離さないビビッドな時間の感覚に満たされ、その中に主人公の姉妹やそれを取り巻く人々の歩みの息遣いが感慨とともに残る。役者脳での刹那の取り込み方や異なる視点からの描き方のセンスや粘り方のようなものを感じ、舞台の時間に浸りつつ、決して簡単な戯曲ではないことにも思い当たりつつ役者たちの力を肌で実感することができました。

    両バージョンを観終えて、同じ戯曲からそれぞれのVer.が照らし出すものが全く違うことに驚き、やがてこの戯曲に隠された仕掛けのしたたかさにも舌を巻く。
    複雑な骨組みの物語というわけでもないのですが、時間の経過の切れ味のよさにロールたちの交わりやそれぞれに抱くものの変化がすっと降りてくる。どこか淡々とした質感もあるのですが、そのなかでの会話や言葉には、観る側が受け取るべきロールたちの歩みへの気づきがさりげなく強かに仕掛けられていて、それが役者達の個性や語り口と重なると、舞台にその役者だから演じ得る風景や質感が浮かび、様々なロールたちの時間への感触や俯瞰が訪れる。なんだろ、作り手ならではの戯曲の間口というか、単にひとつのモチーフを語るだけではない演じ手によって様々に引きだし得るキャパのようなものがあって。

    役者達にも、作り手にも、その豊かな力量と可能性を感じた舞台でありました。

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    2014/02/25 07:33

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