TRIBES トライブス 公演情報 世田谷パブリックシアター「TRIBES トライブス」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    リアルな家族劇の秀作
    翻訳劇は、時として、観客は置いてきぼりにされる場合が多いのですが、この劇は大変普遍的で、誰の胸にも響く、リアルかつ秀逸な家族劇だと思いました。

    ビリーとシルビアは、耳が不自由な障害を持っていますが、それがこの劇のシチュエーション上、決して特殊な家族の形態ではない点に、戯曲の深さを感じ、魅了されました。

    田中圭さんの手話が、台詞以上に雄弁で、感動的でした。

    演出、戯曲、キャスト、スタッフワーク、全てにおいて、一級品の本物の演劇作品に、終始酔いしれる思いを感じました。

    ずっと、父親役は、吉田鋼太郎さんが代役をなさったのかとばかり思っていましたが、どうやら、私の錯覚だったようです。(ご指摘下さった方にお礼申し上げます。)でも、だとしたら、大谷さん、少し、台詞を噛まれることが多過ぎたような気もします。代役なら、致し方ないと思ったのですが…。

    ネタバレBOX

    シルビアの放つ台詞に、何度も胸を突かれました。

    生まれつきの障害者と、後年症状が進む障害者間の、目に見えない格差や階級感。彼女の心情の吐露が、他人ごとでなく、耳に、心に、痛切に響いて、気持ちを何度も揺さぶられました。

    勝手気ままに見える家族も、皆懸命にお互いを思いやり、愛している様子が手に取るようにわかり、登場人物の誰に対しても、感情移入できる脚本の秀逸さに感服するばかりでした。

    鉄パイプのような柱が、部屋を少しだけ、傾斜して囲うセットも、この家庭の有様を、具現化していて見事です。

    音を出す楽器、ピアノが、いろいろな用途で使用される大道具として、この作品の本質を象徴しているように見えます。

    後半、音が聞こえないビリーが、一番雄弁になり、手話で、感情を発露するシーンは、実にスペクタクルでした。

    最初の場面で、家族同士がテンデンバラバラに、台詞を言い合いほとんど聞き取れないのも、言葉を喋れる健常者も、結局は、音のうねりを発しているだけだという、演出だったのだなと悟った時、この芝居の描く、普遍的な世界のリアルさに、瞠目してしまいました。

    一人では生きて行けない弱者に見えたビリーより、彼の兄と姉の方が、ずっと生き辛い人生を歩いているのだという衝撃的な結末に、息を呑む思いがありました。

    観劇できたことを幸せに思います。

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    2014/01/21 23:36

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