TRIBES トライブス 公演情報 世田谷パブリックシアター「TRIBES トライブス」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    繊細な翻訳劇
    手話セリフ(日本語対応手話)のやり取りは健聴者にとって、時に読み取れないハンデが生じるが障害(障がい表記が主流だが自分はこの字がしっくりくる)というのはそういう事だと思う。
    日本で障害が絡む話だと=福祉、という印象を持たれやすいと思うのだが、この舞台はきちんと個人の感情を貫いている。
    聞こえない相手に音で振動を伝え、言葉を発しコミュニケーションを取る暮し。
    障害の程度による差異。その中では彼はまだ上位の位置づけにある模様。
    「普通」な家族だが、曖昧な会話はなくそれぞれが一生懸命に会話をする。通常の海外翻訳劇に出てくるような家族とはひと味違うけど、ラブシーンの描写から結末まで上質な翻訳劇だった。

    舞台セットや衣装で白と黒を基調としたメリハリは映えてとてもよかったが、衣装の白地と地肌が合わさると手話セリフは場所によっては読み取りづらいのでは。
    役者さん全員良かった。休憩込み約2時間30分。
    1/21pm 追記

    ネタバレBOX

    冒頭、家族の内情が窺い知れるが、クリエイティブ?な知的な暮らしぶりのようだけど実際は極々一般的な家族。
    家族団らんのシーンでのビリーの表情がいかにも穏やかな末っ子という雰囲気を醸し出して可愛かった。
    父親はビリーが手話を習得すると聴覚障害者のコミュニティに依存してしまうと考え、手話を禁止し相手の発言は読話させ、ビリーには口話を覚えさせ育てて来た。
    そうさせたのも自分がユダヤ系北部出身者だったから、母親は明るく振る舞っているけどどこか空しく思っているのでは。兄も気分転換で隠れてドラッグ?やっていたり以前はドモリで苦しんでたり。姉はオペラ歌手になりたいけど上手くはいかないようだし。そういう下地が見え隠れした中でビリーは可愛がられて生きて来た。

    そのビリーを変えさせたのがシルビア。
    その後、家族から仇のように位置づけられてしまうが、彼女の家族まで槍玉に挙げて罵詈雑言を浴びせるが、彼女の手話での反論には力強く迫力あるもので聞き(見?)入ってしまう。詩的表現の手話を話す時の彼女の仕草はとても美しかった。

    ビリーが手話を個性と自覚し補聴器を投げ捨てた瞬間、そこから彼の自立が始まると同時に家族との決別の意思表示でもあり、そこから空気が変わったのが一目でわかる凄さ。
    シルビアの老化ではない肉体的な衰えと一緒に生きる事の畏怖、
    弟への愛情が崩壊し、自己の精神も歪み始める兄、
    障害をもった子どもが判った時の母親の苦悩を想像したら彼女にも胸が痛む。
    姉はビリーの生き方を理解しようとしていたのか。
    父は彼と家族を掌握する事で自己満足を得て生きていたのか。
    家族それぞれが互いを大事にし支え合っていた仲なのに、「言葉」を逆手に取り崩壊して行くさまは重く切なかった。
    ビリーの家族から独立の意思と結果が、直ぐに好転をもたらすとは思えない。明確な結末は見せなかったが、漠然とした終らせ方には彼等の自立心が既に芽生え始めているのではないかな、と思ったり。

    手話経験者だが、ビリーの激昂した時の掌音や腕の強弱の動かし方がまんま聾者の使い方で驚いた。
    イギリスの翻訳戯曲だが、台詞に「もし〜」とかの仮定形の言葉が出て来たが確か英語には、それに当たる表現はなかったような気がする。日本語は「もし〜」にあたる言葉があり、劇中もそのまま対応していたがそこら辺が翻訳劇の面白い所なのかな。勉強になりました。
    田中圭さんは悩める青年と凶暴の二面性がますます上手くなっている。
    あと、大谷さんが時々吉田鋼太郎さんのような台詞回しに聞こえて面白かったですw

    0

    2014/01/21 03:23

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大