幻夜 公演情報 観覧舎「幻夜」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    自由は孤独
    不思議な芝居だった。
    夢を紡いだような、現実を重ねたような、でも全体はまとまらない感じ。
    だから「幻夜」なのか…。
    文(ふみ)と武(たける)の関係はいかにもありそうで、そのもどかしさが妙にリアル。
    当日パンフにあるように、去年の夏から稽古を始めたという丁寧な作りが伝わってくる。

    ネタバレBOX

    開演前から舞台では中野あきさんが音楽プレーヤーを聞きながら踊っている。
    時折思い入れたっぷりに歌い出したりする。
    一段高くなった居室に倒れ込みタオルケットにくるまったところで、前説登場。

    これは武(今村洋一)に振り回された文(中野あき)の妄想なのか。
    それとも自由を追い求めていたら独りになっていた武の妄想なのか。

    文という名前の女性は3人登場するが、いずれも武に思いを寄せて報われない。
    武は妊娠した文をブンちゃんに押し付ける。
    ブンちゃんはその子が自分の子であってもなくても受け入れる。

    いくつもの“文と武”のエピソードが語られるが、全体としてまとまってはいない。
    ただ、各々のエピソードは妙にリアルだ。

    例えば武役の今村洋一さんの、“自由を求めていく”姿勢はいつもブレない。
    どうやら彼にとっての自由は“束縛されないこと”であるらしい。
    少なくとも彼がそう信じ切っていることが伝わってくる。
    だから結婚などもってのほかで、文はいつも置いてきぼりだ。
    しかし自由を追い求めた結果、武の周りには誰もいなくなる。

    日置達哉さん演じる、車を自慢したい男も面白かった。
    出会ってすぐデートに誘う男、“めちゃんこ速い“車で富士急ハイランドに誘う男。
    一つひとつの台詞にチャラいながらも熱心な(?)説得力があって可笑しかった。

    “オチ”は不可欠ではないのかもしれないが
    作者の世界に近づくためにも、もう少し理解の手助けがあったら
    個々のエピソードがもっと活きるような気がする。

    ラスト、富士山になった文がひとりになった武に「頑張れ―!」と叫ぶところ、
    自分を一番に考えてくれない男を、
    それでも応援する気持ちが切なくて泣きそうになった。
    観ている私の中で、もっと登場人物が集結したら
    さらに強く揺さぶられたのではないかと思った。


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    2014/01/14 14:59

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