満足度★★★
無国籍感が漂う幻想的なダンス
アンデルセンの童話に基づく作品で、白神さんが主宰するモモンガ・コンプレックスの作風に比べて笑いを取ろうとする場面が少ないながらも親しみ易さは失われていなくて、幻想的な表現が美しかったです。
海岸あるいは月面の様に床全面に砂が敷かれていて、上空には窓枠、さらにその上に三日月が吊られたステージの中で、それぞれデザインの異なる白い衣装を着た9人のダンサーがそれぞれの個性を活かした振付で、ソロ、デュオから全員の群舞まで様々なムーヴメントとフォーメーションが繰り広げられ、あまり動きのないシーンも何回もあるメリハリのある構成でした。
最後は衣装の一部を床に置き、ダンサー達が中央に集まり、皆で本を読んでいる様な雰囲気で静かな終わり方が印象的でした。
当日パンフレットにそれぞれのシーンに対応する原作のワンフレーズが書いてあったものの、具象的にテクストをなぞるのではなく、文章から自由にイメージを展開している様に見えました。
ヨーロッパのみならず、南米、アフリカ、アジアの様々な国の音楽が使われていて無国籍感が漂っていました。特に『ラ・フォリア』が3回それぞれ異なる編曲の版で使われていて、印象に残りました。
クラシックバレエ的な動きやポーズが多かったのですが、床が砂で足場が安定しないせいもあってか、ダンスの精度としては物足りなさを感じました。横一列に並んで客席に向かって来る場面の力強さが魅力的でした。
本編が始まる前に、蠅の格好をした白神さんのソロパフォーマンス『ちいさな1日。(キラリふじみヴァージョン)』があり、小道具を使ってコミカルに開演前の諸注意のアナウンスをパフォーマンス化していたのが楽しかったです。