満足度★★★
米/稲にまつわる6作品
アジアの5ヶ国、6人の演出家が「米/稲〜食生活の共通性と差異について」をテーマに短期間のワークショップで作り上げた15分程度の作品の発表でした。
チェン・ウェイニン(台北)『イリュージョン』
遅刻したため観ることが出来ませんでした。
グエン・ホアン・トゥアン(ハノイ)『案山子』
真面目に農作業を行う妻と昼間から飲んだくれている夫、そしてその様子を見ている案山子を描いた物語で、童話的な雰囲気がある作品でした。
演出手法に伝統的な様式性あるいは革新性も見られず、また演技力で魅せる感じでもなく、凡庸に感じられました。
(評価:☆)
イ・ソング(ソウル)『My Mom』
母の一周忌の日の家族の様子を描いた作品で、韓国の法事が見られて興味深かったものの、ストーリーがありきたりに感じられました。
般若心経が書かれた屏風を用いて舞台の手前と奥を隔てた空間演出が魅力的でした。カヤグム(箏に似た楽器)の生演奏が効果音的にも使われていたのが効果的でした。
(評価:☆☆)
森新太郎『ハノイの幽霊』
エチュードで拾った出演者達の実生活でのエピソードを能の『井筒』の物語構造に落とし込んだ作品で、シンプルで洗練された空間の見せ方が美しく、印象に残りました。
スティーヴ・ライヒ作曲の『ドラミング』のパート1&4を雨音の表現として使い、次第にBGMとしての役割に移行するのが洒落ていました。
(評価:☆☆☆)
チョン・ツェシェン(シンガポール)『うえる』
家族と食にまつわる断片的なエピソードが矢継ぎ早に展開する内に、放射能のモチーフが浮かび上がってくる物語でしたが、その扱いが表層的に感じられました。
全身黒の衣装の5人の役者が緑と赤の紐を水平方向に何本も張り、小道具的に用いる演出がユニークでした。
(評価:☆☆☆)
佐々木透『アマルガム手帖』
テーマに対して米米クラブやアメリカ(=米国)と太洒落レベルの表層的なモチーフを敢えて持ち出す、確信犯的な作品で、馬鹿馬鹿しさの中に批評性が見え隠れするのが魅力的でした。
3人の役者がほとんど絡まずに並走し続けるスタイルが斬新でした。タカハシカナコさんの出オチ感が強烈でした。
(評価:☆☆☆)