満足度★★★★
お国柄や立ち位置が良く見える作品群
台湾、シンガポール、韓国、ベトナム、日本からの参加者が、6人の演出家の下、6チームに分かれて約15分の作品を上演。各作品への質問、趣旨説明などのトークに10分間をあてた。
作品がショートなので、却ってお国柄や個々の作家・演出家の置かれた状況が端的に出るような作品が多く見られた。台湾の作品では、IT製品の世界的下請けである台湾の先進技術を応用したゲームなど室内遊戯が、家庭という社会的単位を破戒し、ひいては、個々のアイデンティティーを破戒して行く様が。ベトナムからは、2作品。男女のジェンダーに関わる問題を案山子を仲介として描いた作品と日本人駐在員とベトナム女性の恋物語。駐在を終えたのだろうか? 日本人は、何も告げずに彼女を捨てた。結果、ベトナム女性は自殺。シンガポールからは、“うえる”という発音から、植える(米を)飢える、餓える(心が)をフラグマン化して捉えた。韓国作品は、チェサを通して母の深い愛を、また日本からは、“アマルガム手帖”という作品の一部抜粋という形での上演であったが、箍の外し方が絶妙で、大人達の化けの皮を剥いだ、実に刺激的な笑いを誘う傑作。
満足度★★★★
収穫あり
思っていた以上の収穫です。6つの作品,それぞれ面白く観ることができました。そして,その中から民族性や感性の違いが徐々に見えてきました。これを理解したうえで互いに歩み寄ることが必要なのですね。
満足度★★★★★
見応えありました
ひとつのテーマでコラボすると、表層的には通訳の活躍が必要ですが、本質的なそれぞれの歴史や風土の違いがハッキリと浮き彫りになります。この上演会を通じて感じたのは、その違いに関心を持って、活かすことが必要なんだということ。毎回、楽天の田中投手の出番のような上演会で見応えありました。
満足度★★★
米/稲にまつわる6作品
アジアの5ヶ国、6人の演出家が「米/稲〜食生活の共通性と差異について」をテーマに短期間のワークショップで作り上げた15分程度の作品の発表でした。
チェン・ウェイニン(台北)『イリュージョン』
遅刻したため観ることが出来ませんでした。
グエン・ホアン・トゥアン(ハノイ)『案山子』
真面目に農作業を行う妻と昼間から飲んだくれている夫、そしてその様子を見ている案山子を描いた物語で、童話的な雰囲気がある作品でした。
演出手法に伝統的な様式性あるいは革新性も見られず、また演技力で魅せる感じでもなく、凡庸に感じられました。
(評価:☆)
イ・ソング(ソウル)『My Mom』
母の一周忌の日の家族の様子を描いた作品で、韓国の法事が見られて興味深かったものの、ストーリーがありきたりに感じられました。
般若心経が書かれた屏風を用いて舞台の手前と奥を隔てた空間演出が魅力的でした。カヤグム(箏に似た楽器)の生演奏が効果音的にも使われていたのが効果的でした。
(評価:☆☆)
森新太郎『ハノイの幽霊』
エチュードで拾った出演者達の実生活でのエピソードを能の『井筒』の物語構造に落とし込んだ作品で、シンプルで洗練された空間の見せ方が美しく、印象に残りました。
スティーヴ・ライヒ作曲の『ドラミング』のパート1&4を雨音の表現として使い、次第にBGMとしての役割に移行するのが洒落ていました。
(評価:☆☆☆)
チョン・ツェシェン(シンガポール)『うえる』
家族と食にまつわる断片的なエピソードが矢継ぎ早に展開する内に、放射能のモチーフが浮かび上がってくる物語でしたが、その扱いが表層的に感じられました。
全身黒の衣装の5人の役者が緑と赤の紐を水平方向に何本も張り、小道具的に用いる演出がユニークでした。
(評価:☆☆☆)
佐々木透『アマルガム手帖』
テーマに対して米米クラブやアメリカ(=米国)と太洒落レベルの表層的なモチーフを敢えて持ち出す、確信犯的な作品で、馬鹿馬鹿しさの中に批評性が見え隠れするのが魅力的でした。
3人の役者がほとんど絡まずに並走し続けるスタイルが斬新でした。タカハシカナコさんの出オチ感が強烈でした。
(評価:☆☆☆)