OPUS/作品 公演情報 新国立劇場「OPUS/作品」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    楽団という最小単位内での人間模様
    観終わって、「100%海外演劇だなぁ」というのが最初の感想。
    演出次第によっては、後味の悪い、冷徹でブラックな話に
    なっても仕方がない題材ですが、小川絵梨子氏の手になる
    それは、違った方向性を求めていたようです。

    ネタバレBOX

    皆ベテランの俳優ばかりなので、開始早々、「こっからは
    日本語にしとこうか」で、客席の爆笑を誘うなど、あ、上手い、と
    単純に思いました。遅れてきた観客に「大丈夫?」とか、本当に
    嫌味なく笑いが取れる人達です。

    ラザーラ・カルテットは、ホワイトハウスでも演奏出来る程の
    実力派カルテットなのですが、それほどの技量の持ち主達なら
    当たり前のように火種を日々抱えているわけで。

    ヴィオラを担当するドリアンはカルテット内随一の演奏家でありながら
    鬱などの精神病を抱え、その安定しなさっぷりを原因に、花形の
    第一バイオリンを演奏出来ずにいる。

    第一バイオリンのエリオットは、癇癪持ちの上に、演奏の技量はそれほど
    高くないことが周知になっていて、実は恋仲のドリアンの擁護があって
    何とかなっているのが実際のところ。

    第二バイオリンのアランは女癖が悪く、浮気が原因で離婚の憂き目に
    あっているし、コントラバスのカールは5年も前から重いガンを患う。

    こんな感じで表面的には上手くいっているものの、内部はいつ崩壊
    してもおかしくないほどの緊張感があり、その微妙に保たれた均衡は
    ドリアンが名器といわれるラザーラのバイオリン盗み出したことが
    きっかけで解雇されるに至った時、一気に壊れていく…。

    男の嫉妬や愛の果てにある憎しみって怖いな、って素直に思いました。
    最後、ドリアンがエリオットを解雇し、自身を代わりに第一バイオリンとして
    迎え入れるよう提案してきた時。その一端をかいま見た気がしましたね。

    それを受け入れてしまう他の三人もすごい。この劇中でも見え隠れする
    けど、表面上の仲の良さはさておき、最終的には演奏家、芸術家の
    エゴ、最高の演奏をしたい、という欲望につきまとわれているんですね。

    最後、第一バイオリンを返さないエリオットと他の皆でのバイオリンの
    取り合いの中、末期ガンであることをドリアンに暴露されて焦っていた
    カールによって、名器は叩きつけられ、完膚無きまでに破壊されます。

    それは、このカルテットの崩壊を意味するのでしょうか。それとも、
    新しい再生を意味するのでしょうか。それは演出家の解釈に多分を
    任されているのですが、小川氏は後者の解釈を選んだようです。
    それが正しいかどうかはさておき、続きが非常に気になる作品でした。

    伊勢佳代氏、カルテットにまだあまり馴染んでない感ありありの、
    力んでいる様子が可愛らしかったです。でも、カルテットに所属
    する際に条件とされた、他のオーケストラのオーディションを
    受けないことを破っちゃうあたり、ただの世間知らずな子では
    ないんですよね。その辺の人物造形がリアルでした。伊勢氏は
    もっと他で客演して欲しいと思っています、個人的には。

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    2013/09/29 09:48

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