満足度★★★
個性と共通性を感じ取れるショーケース公演
素舞台、上演時間20分という枠組みの中で、5団体それぞれの個性とある部分では共通した雰囲気が感じられ、興味深い企画でした。
うさぎストライプ『メトロ』(☆☆)
地下鉄の中での2組の男女のエピソードを描いた作品で、相対性理論の曲に合わせて、12脚のスクール椅子を用いて物語とは異なる運動的・作業的な動きが繰り返され、身体的な高揚が次第に精神的な高揚に見えてくるのが印象的でした。おそらく地下鉄サリン事件に言及していましたが、唐突に感じました。
音楽が大きくて台詞が聞き取りにくい場面が多かったのもあり、音楽にパフォーマンスが負けている様に思いました。
タカハ劇団『クイズ君、最後の2日間』(☆☆☆☆)
「2ちゃんねる」に実際に書き込まれた自殺予告者のやりとりをベースに、繰り返しが続く単調な日々が描かれ、生き辛い現代社会の閉塞間が伝わって来ました。
シーン毎に異なる数秒の物音のループで流されたり、政治用語による卓球山手線ゲームのシーンが挿入されたり、段ボール箱で作られたオブジェが次第に一つの大きな形になって行くといった手法がテーマに合っていて効果的でした。
今回の5作品の中では一番完成度が高いと思いました。
鳥公演『蒸発』(☆☆☆)
アダルトビデオで自慰行為する男を双眼鏡で観察する女と、その女と同居する女との2人芝居ですが、単純な対話劇ではなく、相手に成り変わって喋ったり、客席に説明する様に話したりと、主体/客対が揺らぐ様な構成になっていて興味深かったです。
音楽無しの中、下ネタなのに嫌らしさが感じられない話が淡々と進み、独特の乾いた雰囲気がありました。
ワワフラミンゴ『どこ立ってる』(☆☆☆)
成立していない会話がほんわかとしたムードの中で繰り広げられる、癖になりそうなとぼけた味わいのある作品でした。
ステージの上手にテーブルと椅子が置いてあり、基本的にそこに座って会話が進むという小じんまりとした空間の使い方が不思議でした。訴え掛けるメッセージもなく、無理に笑いを取ろうともしない、エゴが感じられない柔かい雰囲気が素敵でした。
Q『シースーQ』(☆☆)
寿司屋の娘と、そこで働いていた2人の人間以外の生き物とのハーフの女の物語が漫画的に描かれ、奇妙な生々しさがありました。序盤では児童劇の様なオーバーな演技に寒々しさを感じましたが、魚介類の写真や春画が壁面に大きく映し出される辺りから赤裸裸でカオスな雰囲気になり、引き込まれました。
他団体がワンシチュエーション的な空間演出だった中、映像や照明によって空間の質が一気に変わる感じがあって新鮮でした。