満足度★★★
もどかしさを感じる公演
オーケストラがただBGMや歌の伴奏を演奏する陰の存在ではなく、オーケストラそのものとして劇中に登場するという珍しい形式の作品でしたが、音楽と演劇のコラボレーションの難しさを感じさせる公演でした。
1970年代のソビエト連邦時代の精神病院が舞台で、そこに収容されている、反体制活動を行った男と、自分のオーケストラを持っていると妄想する男の2人を通じて、体制が個人の自由を奪う社会の恐ろしさが描かれていました。最後に上官の機転の効いた判断があり、一応ハッピーエンドの形になってはいるものの、ソ連が消滅した今でも同様の弾圧が行われているのではないかと考えさせられました。
タイトルの「良い子にご褒美」が、体制に立て突かないものは普通に生活出来るという皮肉に感じられました。
音楽はソ連の作曲家、ショスタコーヴィチやプロコフィエフを思わせる雰囲気がありました。最後の旋律が、原題『Every Good Boy Deserves Favour』の頭文字からなる「E-G-B-D-F」だったのが洒落ていました。
コンサートホールでの公演でPAを用いていた為に台詞が響き過ぎて、言葉が聞き取れるようにゆっくり喋っていたので間延びした感じがありました。
序盤ではオーケストラの奏者も台詞無しの芝居をする場面があったのですが、専門ではないとはいえ酷い演技で、興醒めでした。
序盤以外は芝居と演奏のパートが独立していてあまり絡みがなく、せっかくの趣向が活かされてないと思いました。
テーマ、音楽、芝居それぞれは良かったのに、それらが上手く組み合わさってない印象があって残念でした。