OUR TOWN 公演情報 劇団フライングステージ「OUR TOWN」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    先入観を吹き飛ばすリアル
    ソーントン・ワイルダー作「わが町」の新宿2丁目版。
    内藤新宿の遊郭、赤線、そして2丁目と変遷を遂げていく町とそこで暮らす人々を描く。
    当日パンフによれば“古典として有名な作品の翻案をクールに作る”つもりが
    “いつも以上に人への思いを詰め込んだ”作品になったのは
    今年の春に劇団員ひとりを喪ったことが色濃く反映しているからだという。
    なかなかまっすぐに伝わらない愛情が交差して、憂いの滲むラストが印象的だった。

    ネタバレBOX

    ほとんど何もない舞台に7脚の椅子が置かれている。
    7人が出て来て、宿場町として始まった2丁目の歴史を解説する。
    ストーリーの軸となる現代の青年二人
    ゲイの大地(小林高朗)とノンケの健一(遠藤祐生)を追いながら
    遊女の心中や赤線廃止など、時代のエピソードを絡めて展開する。

    ゲイであることにこだわった芝居を作り続けている劇団だけに
    “かたち”だけでない説得力があってそれが魅力。
    例えば大地はゲイで役者を目指している大学生として登場するが、
    見た目や言動からいわゆるゲイっぽさは感じられず、一見普通の学生だ。
    だがゲイであることをカミングアウトする時や健一に告白する時の
    現実を受け入れて卑屈にならない“姿勢の良さ”は清々しく秀逸。
    2丁目のママ役がハマり過ぎの感さえある岸本啓孝さん、
    時代物もなめらかにこなし色気のある石関準さん、
    そして作・演出を担当した関根信一さんと
    役者が皆達者なので、何気ない会話の密度が高く思わずくすりとさせられる。

    ちょっと解説が多すぎて“2丁目講座”のような印象を受けたが
    これも「わが町」をもっと知って欲しいという愛情の表れか。

    劇団HPを見ると、過去公演の台本も公開していて
    たまたま私が読んだ台本は100%会話劇だったが
    同じ場所、同じ二人の1年後、5年後…と時間だけが経過するストーリーが面白かった。

    この“定点観測”のような舞台では
    変わらないものと変わっていくものの対比が鮮やかになる。
    新宿2丁目も、表面的には変化しているがその根底にあるものはあまり変わっていない。
    変わらない“場”において、変わって行く“人”が浮び上る。
    大地が死んでしまうという結末が哀しく、
    原作とは少し違うラストに何だかほっとする。

    ゲイの役を演じる役者はいくらでもいるし、オネエキャラなら毎日テレビで見かけるが
    この作品は“ゲイから見た普通の人との距離感”が絶妙で、そこに強靭なリアルを感じる。
    それは「ゲイの劇団」であるという先入観など軽く吹き飛ばす力がある。

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    2013/08/30 04:56

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