生きている家 公演情報 ゲイシャフジヤマNo.1「生きている家」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    美しい骨格
    舞台美術の斬新さやそれを活かした場面転換の面白さ、
    そして何と言っても冒頭から狂言を取り入れたストーリーの骨格が美しい。
    惜しいのは、イマドキのコント風エピソードが多すぎて
    伝統芸能のそこはかとない面白さをつぶしてしまったこと。
    ところどころにきらりと光る台詞があって、これこそが前田花男さんの
    真骨頂ではないかと思った。

    ネタバレBOX

    舞台中央の丸いちゃぶ台に、枝にとまった梟のはく製が置かれている。
    四畳半ほどの畳の部屋は円形で、障子が畳のヘリをぐるりと回る。
    黒子が出て来て障子を回し始めると場転である。
    冒頭、狂言「梟山伏」の一節が演じられ、その空気に期待が高まる。

    優(まさる・山田伊久磨)と翔(かける・日下部そう)は異母兄弟だが、
    翔はもう10年も家に寄り付かない。
    優は現在妻と別居中で、最近とうとう認知症の父を施設に入れる決心をした。
    翔は自分でウェブ関係の会社を興したばかりである。
    30年前、梟の巣を見つけた優がまだ赤ん坊の翔に見せようと雨の中優を連れて山へ入り、
    それを探しに行った母親が事故死するという出来事があった。
    自分のせいで翔の母を死なせてしまったとずっと悩んでいる優。
    一度だけそれを口にして優を責めてしまったと悔やんでいる翔。
    互いに連絡を断ってしまった二人をつなぎ合わせたのは、認知症の父の存在だった…。

    狂言「梟山伏(ふくろうやまぶし)」は、山へ入って梟に取り憑かれ
    「ホーホー」と言うばかりになってしまった弟を助けて欲しいと兄が山伏に頼む。
    山伏は自信たっぷりに祈祷を始めるが一向に効果が無く、
    そのうちに兄まで「ホーホー」と言い始めてしまった。
    あせって二人に祈祷をするが、やがて山伏自身も「ホーホー」と言い出す始末。
    そしてとうとう三人が首を傾げて「ホーホー」…と言う話。

    最初と最後にこの狂言が演じられるのがとても象徴的でよかった。
    当時権威があったはずの山伏の無能ぶりが露呈されて行くさまに
    客席からもくすくす笑いが起こる。
    きっちりした型の中で展開するシュールな可笑しさが伝わってくる。

    死んだ父親の枕もとで、優が「もう一度起きてくれよ!」と嘆くと
    本当に起き上がって、鼻から脱脂綿を取り出したりする。
    この父親役の重田尚彦さんの語り口がとてもよかった。
    淡々と「言葉にするのが苦手」な兄弟の気持ちを代弁し、ほぐしていく。
    狂言同様シュールな展開ながら、父親のキャラに自然と惹かれる。

    “現代のコント”と“古典の狂言”この二つをミックスさせて
    相反する笑いのタイプが共存する面白さを狙ったのかもしれないが、
    共存するには狂言と言い、台詞と言いあまりにも地のテイストが上品。
    この品を損なってまで挿入するほどのコントだろうかと思ってしまう。
    狂言ベースで濃密な本筋が魅力的なので、削ぎ落したこれだけの舞台が観たくなる。
    もっとも、それではゲイシャフジヤマNo.1の個性が失せてしまう
    ということなのかもしれないが…。

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    2013/08/10 06:59

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  • この度は、ご来場有り難うございました。まだまだ未熟身ですしコメントをして頂けろ事にとても感謝しております。私の狙いも、そして修正するべき部分まで細かく的確なコメントだと感じておりますので、正面から受け止め参考にして今後の創作の精度を高めて行きたいと思います。今後も気に掛けて頂けたら幸いです。

    2013/08/13 12:08

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