しゃぼん玉の欠片を集めて※無事公演終了致しました!ありがとうございました! 公演情報 TOKYOハンバーグ「しゃぼん玉の欠片を集めて※無事公演終了致しました!ありがとうございました!」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    レクイエム
     多摩川の土手沿いの一軒家に去年夫を亡くした未亡人が一人で暮らしている。彼女の現在の愉しみは、地元の優秀で善良な清掃会社に掃除の仕事を発注すること。

    ネタバレBOX

     プロの掃除屋に発注するのは、通常であれば、半年に一回でも充分なのだが、深まる彼女の孤独感は、その頻度を上げてゆく。1か月1回になり、毎週になり、終には毎日になって、既に、綺麗な所を掃除するような状態だから、自然、家での雑用や散歩のお伴、話相手というのが、清掃会社に課された仕事になってゆく。
     一方、社員自らも、仕事に誇りを持ち、それなりの金額を請求するのに、対価を貰う本来の仕事でないとの不満も渦巻く。おまけに、顧客の孫が、老人を食い物にする悪徳業者だとの先入観から、スタッフに嫌味を言い、難癖をつける。だが、家族経営の会社としては、顧客からは一件でも多くの仕事を貰わなければ、社員の給料も払えないというアンヴィヴァレンツに苛まれている。
     被植民地で暮らす我々、誰にも納得の行くシチュエイションを実に的確に切り取って主題とし、シャボン玉を象徴として使うことで、詩的で奥行きの感じられる、沁み入るような舞台にしている。
     言い換えれば、アメリカだけに追隋することで自分だけの利権を守り、己の足下に民衆を踏みつけ乍ら、その愚かさを増長させているこの被植民地の為政者の無能に対し、優秀で善良な庶民の抱え込まざるを得ない矛盾を、小さな清掃会社の日常で描き、孤立する老人の孤独感をその発注回数で示唆しつつ、人としてのふれあいを心に沁み入るように描きながらシャボン玉という象徴を用いて孤独な魂の寂莫を描いた秀作。
     惜しむらくは、冒頭、喫茶店のシーンでウェイトレスの使う言葉が、最近、多く聞く誤用、「アイスコーヒーになります」「アイスレモンティーになります」などが使われていたこと。無論、演劇が生き物である以上、演出がわざと誤用を用いて現在を表そうとしたのかも知れない。アイスコーヒーやアイスレモンティーとは別に、ガムシロップを供していなかった点や、アイスコーヒーにミルクを供していなかった点も含めて、本格的な喫茶店とはいえないこと、好い加減な時代を表象しているのかも知れないが。大筋が、とても詩的に仕上がっているので、勿体ない気がした。
     役者陣の演技レベルも高く好感が持てた。おばあちゃま役の久松 夕子さんの品のある演技もとても気に入った。

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    2013/08/09 13:47

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