満足度★★★★
シェークスピア文学は,人生を肯定的にとらえるもの。
シェークスピア文学は,人生を肯定的にとらえるもの。
シェークスピアが愛されるのは,人生に対し肯定的である点かもしれない。演劇そのものは,必ずしも明るいとか,わかり易いとかいえないが,意外と,前向きなのだ。逆にいえば,太宰治みたいに死ぬことばかり考えながら,生き,最後玉川上水で入水自殺した人もいて,そっちは,お世辞にも人生を肯定的には観ていないだろう。
どのみち死ぬから,同じじゃん。という人は,遊園地で遊んでいてください。
シェークスピア演劇は,人生をありのままに写すことが狙いになっている。人生とはこのようなものだ。人間は,こんな風に生き,そして,死んでいくんだよ,といった感じだ。それを,五幕とかに上手にまとめる。
シェークスピアは,36歳頃から,続けて,四大悲劇を作った。『ハムレット』『オセロ』『マクベス』『リア王』。彼は,人生に悲観し,悲劇を作ったわけでは,まったくなかった。悲劇的要素の,演劇における効果に興味を持っていた。だから,悲劇的な人生を作ってみて,悲劇が人の心に与える力とか効果をさぐっていた。
シェークスピアの作品には,厳密にいうとオリジナルはない。元になる脚本は必ずあって,それを,少しばかり脚色するのが,彼の腕の見せ所だった。自然に対し,鏡を掲げて,民衆に演劇として提示していく。彼の作品は,人物の性格が生き生きしているのだ。人生を劇場にたとえた。だから,『マクベス』でも,人生が,歩いている人の影,影法師だっていうんだ。人間の影なんて,月の光がなくなれば,いとも簡単に消えちまうものさ。
『マクベス』は,野望に駆りたてられた男の物語だ。良心の呵責はあるものの,まっすぐ,破滅につき進む。各場面は,比較的シンプルでもある。展開するスピードも,恐ろしく速い。加速度を増す。魔女の呪文。殺人事件の連続。マクベスという一人の凡庸な将軍が,生き,死んでいくのをどう評価してもかまわない。とにかく,一人の男は,生き,そして,死んでいったのである。
やっぱ,死んじゃうんだね。
まあね。
参考文献:福原麟太郎著作集(研究社)