寅と卯 公演情報 片肌☆倶利伽羅紋紋一座「ざ☆くりもん」「寅と卯」の観てきた!クチコミとコメント

  • なるほど。
    ひとまず、「時代劇はファンタジーになりやすい」という持論がある。意図してもしなくても、だ。

    実際には現代を遡った設定なのだから世界観まで完全な虚構ではない。でも生活風習・言葉遣いなどが、現代人である客席の人々とは異なる。理解し合えない不思議さんがファンタジーな存在に感じられる様に、理解し切れない世界観もまたファンタジーになってしまう。その違いの架け橋となるのは、役者の存在感にどれだけ説得力があるか。気の強そうな設定の人物が本当に気が強そうに見えるかどうか。自信を持って演じ切っているか、その為に表面に現れる印象が結実しているかどうか。

    この演目は、役者の仕事振りを観るべき芝居だった。

    ネタバレBOX

    辰巳役の仲村さんが残念ながらその仕事を充分には果たしていない。頼れる兄貴のはずが、どうも腰を据えていなくて発言にも圧を感じない。なんなら出番の少ない卯之助の父のほうが兄貴感が濃かった。
    立ち振る舞いや居場所も気になった。既に死んでいる異質な存在であるはずが、見えていないはずの卯之助以外の人々と同じ空間に存在しすぎている。もっと物質的に場所の概念を無視して縦横無尽に動いたり、佇まいの在り方を調節して欲しかった。

    阿比留のボスっぽさの不足も残念。
    凶悪・残虐・常軌を逸する様な面を見せてくれれば悪役として目線を定められるが、単に不機嫌な人に見えていた。イチ子とジローを精神的に追いつめている感がなくて、阿比留の下にいなければならない理由が見あたらなかった。イチ子は過去に火傷を負ってそれを例の化粧品で隠していて、それが高額だから阿比留の元にいるとか、ジローを弟の設定にして姉の為に一緒にいるとかにすればもうちょっと分かりやすかったはず。
    ラストの、お宝を運びきれずにいたところを捕まるというのも微妙。そんな間抜けが過去に大火を引き起こしてずっと逃げ切っていた事に疑問が湧いてならない。敵役が強大であるほど主人公の苦難が増して物語にもメリハリが付いたと思う。

    こういう設定だと個人的にはエムキチビートの『夜光星ディスコルーム』を思い出してつい比較してしまう。それこそあの団体はファンタジー感が強いけど、「役者の熱量=目の前で人間が本気で何かに挑む説得力」が現実感を生んでいる。
    今回は、台本に書かれている事を役者がどうにかただなぞっていたという感覚だけが残った。

    0

    2013/05/18 23:28

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大