満足度★★★★
手堅い出来栄え
新訳は物語の筋はいじらずに、台詞を所々カットしたりして短くしていました。また、今の日本で使われる言葉遣いを積極的に取り入れていて、翻訳物にありがちの違和感はほぼなかったと言えます。
演出は原作のト書きの指示をかなり汲んでいました。芝居中に音楽がカットインする場面は、原作の指示通りと思われます。ただ使用した曲が物語の展開をベタに表現するような効果を発揮していた点が残念でした。戯曲そのものが普遍的なメッセージ性を持っているにもかかわらず、演出が物語のウェルメイドさを押し出してしまい、観客への訴求力が弱まってしまった感がありました。
文学座の俳優陣は手堅い演技。たかお鷹も良かったですが、妻・リンダを演じた富沢亜古が放つ芯の強さと、その裏側に抱える孤独感に惹かれました。