『                        』 公演情報 荒川チョモランマ「『 』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    礼拝堂の空間を借景に
    ラフに見せかけて、
    細かいところがよく作りこまれているなぁと感心。

    観終わって、登場人物達がかもす
    人生の肌触りが
    くっきりと、あやふやに、切なく、いとおしく感じられました。

    ネタバレBOX

    会場は教会、礼拝堂に入ると
    ベットを使った台が中央に据えられ、
    雑多に物が置かれて・・・。
    風船、ストローやキャンドル、絵本・・・、

    それが、客入れの音楽と重なり合って、
    いろんな風景に見えてくる。
    シューマンのピアノ曲、ビートルズ・・・、
    教会の空気と雑多なものが音に染まって・・・。
    舞台美術というよりは、それ自体がインスタレーションのようでもあり、
    受付で渡されたメッセージを読むと
    3.11の風景と、それからの記憶の具象のようにも思えてくる。
    開演が近づくと、少しずつ場内の光が減じられて、
    観る側はその中に紡がれるドラマの世界に導かれていきます。

    最初は、闇の中に表れた人物がそれぞれの手に持つライトに照らされて、
    動きや台詞たちにゆっくりとその関係がほどけていく。
    3人の関係が断片的に紡がれ、
    少しずつ繫がり、彼らの時間が観る側に満ちていく。

    教会の息子の女性へのストーカーまがいのことも、
    更に深くにある記憶のなかで二人が共有した秘密のことも、
    空の星たちも、パンツも、下駄箱の手紙も、嫉妬も、
    彼女が男を愛せなかったわけも
    その友達の女性の男への男の子への想いも、
    パンツも、下駄箱の手紙も、嫉妬も、3人の顛末も
    記憶の引き出しから一つずつあふれ出して・・・・。

    ちぎられた新聞の遠くの大地震の記事が
    女性の死をあいまいに男に告げ、
    でも、女性は彼の中でそのままに生き続け、
    彼のもとを訪れる。
    冒頭に取り込まれた舞台の風情のなかで、
    劇的でもなく、でもビビッドに、時にはルーズに淡々と、
    男の記憶が観る側をも満たしていく。

    入場時に渡されたカードに差し入れられたメッセージの日付の表現に、
    舞台が重なると
    消え去った女性のそのままにあることがとても心に残って。
    突然に失われたもの、静かに滅失していくもの、
    そして消えずに再びおとずれるもの。
    舞台の時間が霧散して、
    編み上がる表現のビビッドさにも捉われ、
    その先におかれた背負い続ける時間の質感も
    そのままに残って。
    きっと、あの3月11日は、沢山の人生に、
    こんな感覚を刻み付け、
    いくたりの年が過ぎた3.11にも、
    彼女は再び扉をたたくのだろうなぁと思う。
    観終わっても少しの間、礼拝堂の空間に身をおいて、
    過ごしてきた時間やこれから歩む時間のことを
    ぼんやりと考えてしまいました。

    素敵な刹那もあり、ビターな物語もあり、
    痛みも、満ちたものも、喪失感も感じて。
    それらを包括した時間の重なりに
    やわらかく深く捉えられてしまいました。

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    2013/03/12 15:13

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