満足度★★★
魅力的な役者達
ステージ上に設けられた、17世紀のヨーロッパの公開解剖学講義の客席を思わせるU字型の客席に囲まれた細長い空間で、身体的な存在感の強い役者達の演技が繰り広げられ、一部アングラ的な部分はあるものの、基本的には奇を衒わないストレートな作品でした。
イヤホンガイドによる通訳が用意されていましたが、イヤホンをすると普段聞くことのないルーマニア語の響きや、生演奏の音楽の魅力が損なわれるように思われ、芝居のテンションやリズム感とのズレも感じられたので、最初の数分以降はガイドなしで観ましたが、ベルク作曲のオペラ版『ルル』で内容は知っていたので、台詞が分からなくても演技を観ているだけで十分楽しめました。
小悪魔的な魅力で男達をたぶらかすルルが悲惨な死を迎えるという官能的で退廃的な物語にスラップスティックな演出が施されていて、笑える場面が多くあったのが意外でした。
1幕と2幕でストーリーや小道具等、色々な要素がシンメトリックに対応していて、それを象徴するかのように鏡を多用していたのが印象的でした。
上半身裸や下着姿等、露出の多いエロティックな雰囲気が濃厚でしたが、セックスシーンは直接描かずに見立てを用いることが多く、ユーモアが感じられました。
主人公のルルを演じたオフェリア・ポピさんは多様な表情と声色で男達を引き寄せては突き放す姿が魅力的で、まさに「ファム・ファタール」といった感じでした。
他の役者達も極端に太っていたり長身だったりと独特な外見や佇まいで、見世物小屋的な雰囲気があり、印象的でした。
ヴァイオリン、チェロ、ピアノによる演奏はあまり生演奏である必要性が感じられず、曲数が少なくて同じ曲が変奏もされずに何度も使われていたのも残念に思いました。