満足度★★★★
結論は出せない
第二次世界大戦戦時下の罪を問われる天才指揮者。
出演俳優さんたちの役柄は、それぞれの立場の代表者でもあり
皆さん見事に演じていました。
平幹二朗はまさに天才音楽家の風貌でふるまい、
筧利夫はまさに口達者に容赦なく、戦勝国アメリカを代表して断罪する。
小島聖のセンシティヴな様子は、数々の苦難を経験した様を想像させ、
普段は良くその外見から、美人役が多いけれど、そうでない役の方が
良さが発揮できるように思えます。
小林隆は、市民、観客の代表として生き抜くための小賢しさを好演。
福田沙紀、鈴木亮平は、天才音楽家に対する尊敬とナチス協力者への
嫌悪という二つの面に対する戸惑いを、もっぱら受けの演技のなかに
見え隠れさせる非常に緊張が強いられる難しい立場。
芸術の尊厳を保ち、しいたげられた人々に安らぎ喜びを与え続けられる
立場を守るか、反抗し市民を捨ててその場を去るか、どちらに正義があるか。
安易な結論を提示しない、決して答えを出さない本作のスタンスは、
劇中で迷える人々と同じで、当然の結果と言えるのでしょう。