テイキング サイド ~ヒトラーに翻弄された指揮者が裁かれる日~ 公演情報 WOWOW「テイキング サイド ~ヒトラーに翻弄された指揮者が裁かれる日~」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    行動の規範は、自己の感情?
    何となく、そういう隠れたテーマが浮かび上がって来るような印象を受けました。

    立場の異なる6人の登場人物。その一人一人に、作者がしっかりと命を吹き込んだ脚本の秀逸さに、驚嘆しました。

    平さんと筧さんの一騎打ちの芝居なのかと思っていたのですが、誰もが、重要人物で、各人に、人間の本質が封じ込められていて…。

    「ドレッサー」や「戦場のピアニスト」でも、驚嘆させられたのですが、この作品は、更にその上を行く傑作でした。

    行定監督も、舞台処女演出作は、如何にも映画監督の演出でしたが、舞台演出家としても、腕を上げられたなあと嬉しくなりました。

    平さんと筧さんももちろんですが、脇の、小林さん、鈴木さん、福田さん、小島さんの好演が光り、珠玉の人間ドラマになっています。

    ただ、私は、以前、フルトウ゛ェングラーの子供を宿した女性側から描かれた舞台作品を観たことがあるので、大よその、時代背景や、人物の履歴をわかっていて、この作品も理解しやすかったのですが、歴史に疎い方には、難解な芝居かも知れないと思いました。

    戦慄の走る映像もあるので、トラウマになりそうな方には、おススメできないかも。

    ネタバレBOX

    小林さん演じる、ヘルムートが、筧さん演じるアーノルドに向って、「自分の感情にまで検閲を掛けた」という趣旨の台詞を投げかけるところがありますが、この作品、まさに、人間の感情と対峙して、ずっと息を呑み続ける舞台でした。

    ナチに抵抗せずに、ベルリンに留まったフルトウ゛ェングラーにしても、ユダヤ人の迫害を目近に目撃し、ナチの所業を憎んでやまないアーノルドにしても、その立ち位置だから、行動した結果をお互いに、自己肯定するけれど、もし、別の立場だったら、どういう行動に出ていたのか、自分でも確信できない部分が必ずある筈で、結局、微力な人間の最後の行動規範は、それぞれの感情以外にはないのかもしれないと思わせられました。

    主要人物の二人より、アーノルドの尋問を見守る、反ナチ運動の闘士の娘エンミと、ユダヤ人で、両親が迫害に遭ったにも関わらず、フルトウ゛ェングラーの生み出す音楽の虜になっているウィルズ中尉の、感情の発露シーンの秀逸さに舌を巻きました。

    どの人物も、実に、リアルで、各人の言動に納得が行き、その度、その人物に感情移入してしまうので、観客は終始、登場人物全員に、味方しなければならない定めで、傍観者ではいられない立場に立たされます。

    それを思うと、この「テイキングサイド」は、まさに当を得たタイトルで、作者のお手並みあっぱれと感じ入りました。

    ただ、ナチによる実際のユダヤ人迫害の生々しい場面が、アーノルドの悪夢という形で、目の前で映し出されるため、観客は、それを目にしないわけには行かず、気の弱い方には、おススメできない舞台かもしれないので、その点に不安のある方は、観劇なさらない方が良いと思います。

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    2013/02/05 01:41

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