テネシー・ウィリアムズ短編集 公演情報 有機事務所 / 劇団有機座「テネシー・ウィリアムズ短編集」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    現代と不気味にリンク
    名作「欲望という名の電車」等が書かれる前、彼の初期の作品だという
    4つの短編はいずれも作者の生い立ちと時代を色濃く反映している.
    今の時代から見れば古風な言い回しに、
    若干ついて行くのが精一杯のような場面も見受けられた。
    珍しく硬派なストレートプレイに取り組むこと自体評価されるべきだと思うが
    2時間半はちょっと長い、と感じてしまった。

    ネタバレBOX

    演目は以下の4つ。
    「財産没収」
    「しらみとり夫人」
    「踏みにじられたペチュニア事件」
    「バーサよりよろしく」

    テネシー・ウィリアムズは、父親の暴力や自分が病身であったこと等
    余り恵まれた家庭環境ではなかったという。
    彼の姉は精神疾患でロボトミー手術を受けさせられた。
    南部の特権階級から貧しいアパート暮らしへの激変もつらいものであった。
    それらは彼の作品に色濃く反映されていて、必然的に作品は暗く希望が見いだせない。

    簡素なセットは1話終わる毎に役者陣がみんなで運んで準備する。
    この動きが整然として無駄がなく好感が持てた。

    ナビゲーター役の小田和也さんが柔らかな話し方で、作者とその時代について
    解説をしてくれることが大変理解の助けになった。

    作品で使われる若干古風な言い回しや時代がかった繰り返し等
    役者さんも咀嚼しきれていない感じだし、それに伴って動きも単調になる。
    その中で自然に役になり切っていたのが
    「バーサよりよろしく」のバーサ役日下部あいさんだった。
    精神を病んで、店の女主人から出て行くように言われる難しい役だが
    追いつめられて行く中で、こわばっていく身体や病的な感情の揺れを表情豊かに演じた。

    「しらみとり夫人」のムーア夫人や「バーサよりよろしく」のゴールディを演じた
    翠野桃さん、プライドとしたたかさを併せ持つ人の台詞が上手い。

    「しらみとり夫人」のワイアを演じた津本陽子さん、
    魔女のような大家の言い分にも一理あると思わせる説得力があった。

    ナビゲーターも最後に触れたように、
    1940年代という戦争前の不穏な時代は、どこか現代社会と共通している。
    家庭の崩壊、生活レベルの転落、環境の激変、そして精神を病んでいく人・・・。
    それらが私たちの生きる時代と不気味にリンクするからこそ
    今テネシー・ウィリアムズの短編を上演する意味があるのだと思う。
    ならば尚更、時代に合ったテンポで効果的な見せ方をする必要があるのではないか。
    コンパクトに凝縮すれば、“くり返すテネシー・ウィリアムズの時代”として
    まるで現代社会の底辺をオムニバスで見るような短編集になるだろうと思う。

    8

    2013/01/28 01:23

    0

    0

  • 小田和也さま

    ご丁寧にコメントいただき恐縮です。
    時代背景や社会情勢が重要なポイントになるお芝居の解説って難しいですよね。
    本当に自然に、違和感なくその情報が入って来て、聴き入ってしまいました。
    また聴きたいです(笑)
    こちらこそどうもありがとうございました!

    2013/02/04 21:49

    うさぎライター様


    公演に足をお運びいただきまして、また、ご意見をいただきましてありがとうございます。

    お褒めのお言葉も賜り、光栄でございます。
    解説の文章が私の言葉となり、それが、お客様が作品を受け止められる一助となりました事、大変嬉しく思っております。

    一同、いただいたお言葉を大切に、これからも邁進してまいりますので、何卒、ご意見、ご指摘をいただきますようお願いを申し上げます。

    最後に、お礼のコメントが遅くなりまして申し訳ございませんでした。

    ありがとうございました。

    -小田和也-

    2013/02/03 15:00

    彩見江里さま

    私の年代でさえ経験も想像もできないのに、若い彩見さんがあの時代の空気を漂わせるのは
    どんなにか難しく、努力されたことかと思います。
    「財産没収」のウィリーと接点を見つけるのは大変でしたでしょう。
    でも精一杯見栄を張ることで、かろうじて自分を保っているような表情が印象的でした。
    こちらこそどうもありがとうございました。

    2013/02/03 00:27

    うさぎライター様
    この度は 有機座新春番外公演へのご来場、誠にありがとうございました!
    そして、細やかなコメントありがとうございます!

    戦争や闘争を経験していない世代である私たちが、あの時代を表現するのは、本当に、かなり難しいのだと感じました。

    自身の日常から逸脱したリアリティを追求する事は、
    目次のない百科事典を、あてもなく潜り続けるように、際もなく重苦しい物でした。

    今回の公演を通して、ご縁をいただけた事、感謝しております。
    前出の二人と比べますと、あまりうまくコメントにお返事できていないかと思いますが、
    ご容赦いただければ幸いです。

    また、次回公演(時期未定ですが)にも、ご来場いただけるよう、精進いたします。

    この度は、誠にありがとうございました!

    彩見江里

    2013/02/02 23:01

    一条さま

    テネシー・ウィリアムズという作家、超現実主義者なんでしょうか。
    登場人物のキャラが鮮やかでドラマチックですね。
    改めて作家の魅力に気付かされました。
    こちらこそありがとうございました(^^♪

    2013/02/01 02:20

    翠野桃さま

    今の時代に共通する、何か追いつめられたものを感じさせる人々ですね。
    私はゴールディが結構好きです。
    あのキャラがあるから、バーサがいっそう哀れになる気がしました。
    こちらこそありがとうございました(*^_^*)

    2013/02/01 02:12

    うさぎライターさま

    出演しました翠野桃です。
    ご来場頂きありがとうございました。
    ご感想、そしてお褒めの言葉ありがとうございました。
    どこか生きづらい現代社会にテネシーを上演することは私どもも意味のあることだと実感しております。どの役も演じていて、切ないのに愛おしさも感じていました。
    頂いたご感想を今後の演劇活動の糧に、努力していきます。
    今後とも宜しくお願いいたします。

    2013/02/01 01:28

    うさぎライター様、この度は御来場頂きまして、誠に有り難う御座いました。
    そしてコメントも残して頂き、有り難く存じます。
    次に向けて、明確な課題も見付かる貴重な公演になりました。
    更なる飛躍を目指し、精進致します。
    今後とも宜しくお願い致します。

    2013/02/01 00:36

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