ミュージカル『シラノ』 公演情報 東宝「ミュージカル『シラノ』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    男ってなんて弱いんだろう
    ご存じ「シラノ・ド・ベルジュラック」をミュージカル化した作品の再演。

    「顔がいいけど頭の中はそうでもない男」に「頭はいいのだが顔が…の男」が手を貸して愛する女性を手に入れるという、ちょっと愉快な前半と、彼らに訪れる悲劇を描いた後半に分かれる。

    ネタバレBOX

    全体的に演出のテンポはいい。場面展開もダレない。
    特に前半はサクサク進む。そして、後半の悲しみを予感させる幕切れで第一幕は終わる。第二幕の前半は苦戦する戦場が舞台ということもあり、悲壮感が漂う。そしてラストへ。ラストは静寂の使い方が巧みで、観客の気持ちを盛り上げる。

    やっぱり「顔じゃくなくて、中身なんだよ、男は」という単純な話でもなく、自分の想いはどんなに稚拙であったとしても、自分の言葉で伝えるべきであり、また、自分の気持ちを偽らないこと、という示唆が物語の中にあったと思う。

    まあ、そこまで考えなくてもいいのかもしれないが、「男は弱いな」というのが、全体の印象でもある。
    辛辣で勇敢なシラノも、自分の容姿に自信が持てなくて、自分の気持ちを偽ってしまうし、容姿には自信があるクリスチャンも、自分の教養には自信がなく、シラノに手を貸してもらってしまう。

    クリスチャンは、徐々にとまどいが出てくるのだが、ロクサーヌに本当のことが言えない。
    かたやシラノは、最後の最後に、実は自分だった、ということを匂わせてしまう。

    2人とも勇敢な騎士なのに、「ああ、なんて男って弱いんだろう」と思ってしまう。

    舞台は意外とシンプル。全体的には黒っぽいというか、暗く陰影がある印象だ。
    舞台の後方には、メタリックな壁があり、そこに緑の自然などの映像が投影されたりする。
    戦場でガスコン青年隊が窮地に陥り、暗転後、数年後の秋のシーンにつながる。真っ赤な紅葉がはらはらと舞台の上に散り、ガスコン青年隊が流した血潮のようにも見える。
    美しく悲しいシーンだ。

    シラノを演じる鹿賀丈史さんが、思ったよりも歌はそれほどでもというシーンも多少はあったが、主役然として中央にいる。脇の役者や演出の盛り立て方もいいし、鹿賀丈史さん自体の佇まいもいい。多少のことは気にしないでおこう。

    Wキャストでロクサーヌ役の彩吹真央さんは、さすが元宝塚だけあって、身のこなしも歌も抜群にいい。彼女とデュエットするとその相手の歌もうまく聞こえるのが素晴らしいと思った。

    生演奏でこれぞミュージカル、という雰囲気は新年最初の観劇にふさわしいものであった。

    日生劇場は、好きな劇場。どの場所で見てもストレスが少ない。赤絨毯の雰囲気もいい。ミュージカルは、渋谷にできた専門の劇場よりはここで観たい。

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    2013/01/10 05:29

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