満足度★★★
読み込み
出演者の身体能力は楽しめたが、いかんせん。原作の読み込みが浅い。テーマが、”苛め”であるならば、その辺りをもう少し深く追求すべきであった。その為に、原作に出てくる芋虫の登場は割愛すべきではなかった。なぜなら、アリスは伸び縮みしたり、首が蛇のようになって、自分の変化に耐えられなくなり大泣きして、涙の海を作ってしまったりするわけだが、問題は、そんなことではない。アイデンティティの崩壊にある。苛めが、やはりアイデンティティそのものを他者が否定するという本質を持つのであれば、芋虫が伸び縮み後のアリスに対して投げかける”Who are you?"の質問こそ、この作品の中心的テーマであったはずである。ドッジソン自身、弱々しい人物であったようだから、己自身もアイデンティティ問題では随分悩んだであろう。このような点に気付いていないとしたら、演出は、非常に問題である。