月とスイートスポット 公演情報 ヨーロッパ企画「月とスイートスポット」の観てきた!クチコミとコメント

  • 八連鎖からのまどろみ、まどろみ〜ん
    ヤンキーやヤクザが機敏に動き回ってるだけでファイヤーアイスストームな心地よさ、懇切丁寧に導いてくれる異論理ワールドの煙を吸って、いざ跳びたて漢のプライドと欲望の道へ!
    ヨーロッパ企画は見終わった後思い切り拍手したくなる劇団ランキング上位濃厚であろう、複雑さをわかりやすくカタルシスに運んでくれる、ゼルダ的ハテナと発見楽しさオンパレード。
    この劇構造どうすんだ?てのとこのボスどうやって倒すんだ?が似ている感じ。
    ボスの造形が楽しいのも同じ。
    いっぱい笑えて楽しかった!
    みなしご最高!

    ネタバレBOX

    コメディとしてすごい面白かったので、それだけで満足なのですが、感じた事。



    体を刺されたり撃たれたりで倒れているヤクザ三人。
    無事な舎弟に向かって命令をする。
    「いますぐ救急車を呼べ」「いや、救急車では身元がバレるから呼ぶな」
    「音小さめで呼べばいいだろ」「車体の白さで見つかるだろ」

    結局ドラッグストアに行かせることになるが
    「マツキヨに行け」「いや杉薬局のほうがいい」
    「杉薬局は24時間営業じゃないかもしれないだろ」「いやそれでも絶対杉薬局だ」

    スイートスポットという、使うと過去が見えるらしいドラッグ。
    実際に使い見事過去が現れる。しかし幻のはずが使用者以外のみんなにも見えたり、触れ合えたり、使用者がその場からいなくなってもまだ存在してたり、そんな未来いやだ!変えてやる!などと、時空間が様々入り交じりすっちゃかめっちゃかに。

    そんな中でも人々は、時には人生に関わる大切なことで、時にはどうでもいい細かいことで、口喧嘩をすぐにおっ始める。


    次々と執拗に繰り返される口喧嘩のやり取り。
    端から見るとどうでもいい喧嘩でも、そこには一人一人の欲望やプライドや想いや信念が詰まっている、のであろう、大した意味がなくとも。
    は?なにそれ?と無茶苦茶な現象を目の当たりにし、なおかつ追われてていつ死ぬかわからない、未来の自分は既に死んでいる、好きな人と人生を添い遂げることができない、それぞれにとってわりと絶望的な状況でも、そこで行われるのは口喧嘩を介する特定の誰かとの積極的なコミュニケーション。

    そして色々あって記憶忘却剤をまかれ、過去が見える前の序盤のシーンに戻る。

    そのシーンで、二人は壁に寄り添い、ピノと雪見大福をお互いに分け合う量で喧嘩をする。
    いつ死ぬかわからない状況で、子供のような、中学生のあの頃のような喧嘩をする。
    それが、すごく悲しく、微笑ましく、羨ましく見えて来る。
    決して死にそうでやばくて苛々して喧嘩している訳ではなく、
    二人の思い出と共に積み重なって来た関係性があって、それがいつまでも続く喧嘩と同じようにどこまでも続いていくような、死に際ですら崩れない些細すぎるやり取りが、余りにも完成されているように、世界が完結しているように、それ自体が幻かのように心をかすめてくる。
    議論的には終わりの無い立ち止まったぶつかり合いなのだけど、関係性的にはどんどん歩んで進んでいくぶつかり合い。
    そんな素敵な無駄なやり取りのまどろみの時間に、羨望と癒しを貰いながら、温かく家に帰れました。

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    2012/12/13 06:52

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