満足度★★★★★
真っ当なシェークスピア劇
「ヘンリー六世」から観ているので、いつもは、同じ名前の人物がたくさんいて混同したりする部分がわかりやすくて、すぐに、物語の世界に入り込めて、その分、じっくり堪能することのできた「リチャード三世」でした。
やはり鵜山さんの演出は傑出している。今まで、たくさんの「リチャード3世」を観て来たのですが、今回程、シェークスピアの書いた台詞が時を越えて、胸に沁みた経験はなかったように思います。
それは、個々の役者さんが、台詞を自分の身に落として、きちんと消化した上で発しているからだと思うのですが、そういう演出をできる鵜山さんの才能には感嘆するばかりです。
落魄れたマーガレットが、恨みを込めて、この舞台の登場人物の悲劇を俯瞰して眺めている様を、中嶋さんが壮絶に凄みを込めて演じていて、迫力がありました。
母の悲哀を全身で表現した倉野さん、那須さんと、少ない女優陣が、大健闘し、これまでになく、女性視点からも深みのある「リチャード三世」でした。
今回もまた、城全さんの声に圧倒されました。
リッチモンドの浦井さんは、品が良く神々しく、存在感が傑出しているのですが、たぶん、楽屋待機時間が長いのが影響されたのか、ややお顔がふっくらし過ぎていたのが、ちょっと惜しいなと思いました。