満足度★★★★
よく練り上げられた劇です
「リプレイ」という小説があります。
中年を迎えた主人公が、ある偶然により、自分の過去に戻ってしまう。
一定の期間を過ぎると(しかもその期間は、どんどんと短くなっていくのだが)
戻った少しあとに「リプレイ」される。
彼は、過去の大リーグのワールドシリーズや、競馬の記憶から、大きな富を
築き、その「リプレイ」した世界で、実にさまざまな人生を送り、さまざまな
女性と暮らす。
しかし、最後の「リプレイ」で、彼が悟ったことは・・・
この劇を観ながら、この小説のことを考えていました。
過去を変えること、それは果たして、よりよいことなのだろうか。
よりよいとしても、その変化から派生する「悲劇」「不幸」は見過ごしていいものなのだろうか。
この脚本家も、似た感覚の持ち主であったことを喜びます。
巧みな展開で、何回も「あ、終わりかな・・・」という瞬間を裏切って、最後まで何度も「どんでん返し」
を提供してくれました。
役者さん達も、子供役と対の大人の役とを、よく演じ分けていましたし、
その合間合間に入る、「コント」風の、新作パン、SF作家の場面、経理課女子社員も、「脇」ながら好感の持てる
熱演をしてくれました。
ここに「大滝秀治」のような、「ただいるだけで雰囲気を作れる」重鎮がいたらという思いはあります。
若い人ばかりの劇団の「泣き所」なのでしょうが、あと何十回も公演を重ねることで、それは解消されますね。
めずらしく、最後に、涙腺が少し弛んでしまいました。
すてきな劇に、感謝。