かもめ来るころ 公演情報 トム・プロジェクト「かもめ来るころ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    初演と再演の間には、2011年3月11日が横たわる
    九州に建設された火力発電所反対の運動にかかわってきた、実在の人物を描いた作品。
    しかし、舞台としての面白みには少々欠ける。

    ネタバレBOX

    タイトルとか、フライヤーの写真とか見ていると、老夫婦のちょっといい話なのかと思っていた。
    が、少し違っていた。

    松下竜一という実在の人を描いた舞台だった。

    豆腐屋を営んでいた松下竜一は、短歌からエッセイを書くようになり、豆腐屋をやめて、作家として生活していく中で、公害を知り、九州にできる火力発電所反対の運動にかかわっていくことになる。
    そうした彼の姿を、彼の妻とともに描いた作品だった。

    この作品は3年8カ月ぶりの再演だと言う。
    初演と再演の間には、2011年3月11日が横たわる。
    したがって、この作品の後半で述べられていく火力発電所建設反対の意味も、観客にとって大きく変わってくる。

    確かに、そういう意味では興味深い物語ではある。
    しかし、舞台としての面白みには少々欠ける。

    すなわち、オープニングとエンディングは別として、松下竜一とその妻の話が、あらすじのように、説明されていくだけなのだ。

    特に後半では実際の写真や彼の肉声まで流れる上に、基本、妻のモノローグが物語の中心となっているのだ。どうもこれでは舞台として面白くない。
    役者の再現ビデオを交えながら、その人と業績を紹介していく、ドキュメンタリーの映像作品のような構造なのだ。
    ラストは、彼がその後どうなったのかが、字幕で示されるに至っては、そういうことを含めて、舞台作品にしてほしかったなあと思った。

    この作品と同じく、ふたくちつよしさんが、作・演した『一銭五厘たちの横丁』と、この作品は似たようなアプローチであり、演出方法なのだ。
    『一銭五厘たちの横丁』のときはそうした写真などの実写が大いに生きていたのだが、今回はそうはならなかった。もっと大胆に脚色してもよかったのではないかと思うのだ。モノローグはもっと減らして。

    舞台は、高橋長英さんと、斉藤とも子さんの2人芝居。
    50歳になるはずの斉藤とも子さんは、19歳の妻から演じるのだが、若々しくって驚いた。うまいなあと思う。かたや、30歳の竜一を演じる高橋長英さんは、少し無理があるようだ。動きがなんとなくお年寄りなのだ。しょうがないけど。やはり味があってうまいとは思うのだが。

    竜一の作った短歌が、暗転・セット換えのたびに幕に映されるのだが、後ろの席からだと読みにくい。出すタイミングも失敗していたりしているし。
    全体的にあまりにも暗転が多すぎるので、テンポが悪く感じてしまうのはもったいない。

    0

    2012/10/12 05:50

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大