満足度★★★
家族の崩壊
家族が愛憎の果てに悲劇的結末を迎える物語を特別なことをしないオーソドックスな演出で丁寧に描き、やり切れない苦々しさが伝わってきました。
1950年代のブルックリンが舞台で、妻と姪と一緒に暮らす男の所にイタリアから出稼ぎに来た兄弟を住まわせることから、潜在していた家族関係の不和が露呈し崩壊してしまう物語でした。
役者陣が熱演で、格闘のシーンでは痛しさが伝わってくるような緊迫感がありました。
ストーリーテラー的な存在の弁護士訳を演じた中嶋しゅうさんの渋い佇まいが素敵でした。
出捌け口を5つ設けて導線を工夫することによって同じ空間を隣接する部屋のように見せる演出が、狭いステージを有効に使っていて良かったです。
ステージ上にも客席を設け、役者は両側から見られながら演技をするステージプランになっていましたが、そうすることの意図があまり感じられませんでした。ステージ上の席から観たのですが、通常の客席から観たら異なった印象を受けたかもしれません。
服装に当時のアメリカの労働者の雰囲気が出ていて、さらに劇中で日が変わるごとに異なる服に着替えたりと、衣装が芝居のリアリティーを強化していました。