満足度★★★
優しさに溢れた物語
ストーリーも演出もオーソドックスで分かり易いものでしたが、直接的に感情を出すのではなく、台詞の奥に秘められた思いが、柔らかく伝わって来るような、丁寧に作られた作品でした。
1970年代の天狗伝説が残る九州のとある町が舞台で、27年前に他の男と失踪して世間的には神隠しにあったとされていた妻が戻って来て、事業に失敗し妻にも逃げられた息子も戻って来て、さらに曰くありげな若い女性もひょんなことから転がり込むところから始まる数日間を描いた、悲喜こもごもな物語でした。
人生が上手く行かなくても前向きに行きて行こうというメッセージが押し付けがましくなく表現されていて、気持ち良く観ることが出来ました。お互い嘘だと分かっていながら信じている振りをするシーンが印象的でした。
4人の出演者の内、3人は実際に九州出身の方で、「ばってん」「~っち」といった九州弁が優しく響いていました。
村井國夫さんと岡本麗さんの仲の良い老夫婦っぷりが可愛らしく、とても魅力的でした。悪態を突きつつも内心では両親のことを思っている息子を演じた池田成志さんも芸達者で楽しかったったです。
重要な台詞の前まで環境ノイズ音を流すことによって、台詞を言う時の静けさを際立てたり、暗転時に背景を光らせて視線を誘導する等、地味ながら効果的な演出が作品の雰囲気に合っていて良かったです。