満足度★★★★
家族との旅
時間を行き来しながら実の家族、仮の家族の関係性が描かれた物語で、シュールでノスタルジックな中に少しビターなテイストもある雰囲気が魅力的でした。
今までの作品とは異なる重く暗い質感も見られ、作風の深化を感じました。
ある夫婦が死別するとこらから始まり、夫婦の過去と現在と未来が並列して描かれ、反復や輪廻が盛り込まれていて不思議な時間感覚がありました。前半は色々なエピソードが乱立し、スベリ芸的な失笑系の笑いが多くて、不完全燃焼に感じられたのですが、後半は物語の芯が明確になり、印象に残る台詞もあり、見立てや音楽の演奏を用いた多彩な演出手法も冴えていて、引き込まれました。
ベタな感動を一旦相対化しつつもシニカルな表現にはせず、新鮮さを加味した上でベタに回帰した演出が心地良かったです。今までの作品は強烈な高揚感で賑やかに終わることが多かったですのが、爽やかな余韻を残す静かな終わり方が素晴らしかったです。
ベニヤ板だけで構成された舞台美術は、見てすぐにどういう大仕掛けがあるか分かってしまうのが少々勿体なく思いましたが、役者が意外な方法でその美術に関わることによって、とても美しいシーンとなっていて、強く印象に残りました。
漫画に出て来そうなようなキュートで個性的なキャラクターばかりで、全員が飛び道具的状態ながらも全体としてのまとまりがある演技のハーモニーが魅力的でした。
特に亀島一徳さんのちょっと駄目な所もある男らしさと、島田桃子さんの天使っぷりが素敵でした。