涼~すずみ~水 公演情報 BoroBon企画「涼~すずみ~水」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    場を豊かに変えるお芝居の力量
    場内に入ると、少々ラフな感じで舞台が組まれていて、
    椅子の並べ方などもどこか手作り感があって。

    でも、供されるものは実にしっかりと作りこまれていて。
    そもそも、ワンドリンク付ということで開演前に注文したカシスオレンジは
    暑さも時間もすっと霧散するような絶品だったし、
    舞台はその味に負けないほどにきっちり作りこまれていて・・・。

    見終わって、
    なにか、とても贅沢をさせていただいた気分になりました。

    ネタバレBOX

    *あやめ十八番(堀越チーム)/「Love potion #9」

    男を問い詰める女性の姿と
    主宰の語りでまずは観る側を舞台に引き込んで、
    一枚の消費者金融のカードをキーにして、
    物語を組み上げていく。

    二人の女優がロールをきっちりと務め上げる。
    コアの物語の中心として
    キャラクターが
    清純に、あるいは艶かしく、さらにはとり憑かれたように描かれ、
    外側として、顛末の視点となり、常に舞台にあって
    枠組みを制御し、展開を束ね、場面の表情を背負い、
    空気を束ねて観る側に物語の質感とともに流し込んで。

    男優達もキャラクターの立ち位置がくっきりとわかるお芝居。
    チャラさにしても、普通さにしても、意思の強さにしても、
    ストレートプレイとはちょっと異なる語り口で
    物語の骨組みを組み上げて。

    音楽のクオリティも担保されており、
    昭和っぽい曲のメッセージ性が物語のニュアンスをしっかり繋いで。
    また、このフォーマットの中で、
    主宰のパフォーマンスもしなやかに生きる。

    見ていて表現が古風で新しく多彩なのですよ。
    今風の愛情の描き方などにも、
    べたさと洗練があり、
    荒事とは少々違うのでしょうが
    スリッパで頭を引っぱたくような誇張に始まって、
    常磐津や浄瑠璃のごとく
    うん十年前の流行り歌風の曲で物語を進めるのも
    薬を飲んだ態のお芝居にしても、
    ストレートプレイでは描き得ない、
    歌舞伎的なスピリットや表現の自由さが縫込まれていて。
    別に隈取をしているわけでも
    見栄を切るわけでも、六方を踏むわけでもないのですが、
    こういう表現の多彩さに、
    物語を処する伝統芸のノウハウが裏打ちされている気がして。

    時間を忘れて見入ってしまいました。

    *BoroBon (水下チーム)/「阿房列車」

    名前だけは聞いたことがある戯曲だったのですが、
    実際の上演を観たのはこれが初めて。

    役者にゆだねる部分の多い一方で
    いろんな仕掛けに満ちた戯曲だと思う。
    舞台の空気にしても、夫婦の距離にしても、
    間にしても、
    観る側が前のめりになることなく
    そのままに染められてしまう。

    戯曲に仕組まれた緊張と弛緩と
    役者たちが織り上げる舞台の密度が
    絶妙にリンクして、
    ちょっとした不条理や
    記憶のあいまいさまでが、すっと実感に置き換わる。
    冒頭のクイズや
    アイスクリームを売る女性の歩く方向などが生み出すズレから
    やわらかく足元が揺らぎ、
    車内で過ごす時間がすぅっとぼやける。

    ちょっと不思議な感覚、
    実をいうと、中盤あたりで
    舞台の時間にとりこまれるような感じで
    やわらかい睡魔が降りてくるような気配を感じたのですが
    台詞のひとつずつが意識から消えずに
    クリアに積もっていたりも。
    なんだろ、ふっと舞台の空気の恣意な弛緩に引き入れられて
    しまったのかもしれません。

    観終わって、二つの作品が
    それぞれの印象を重ねあうこと合うことなく
    でも、ひとつの公演として、互いをふくよかに映えさせて。

    中篇ふたつをたっぷりと楽しませていただきました。

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    2012/07/20 11:27

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