満足度★★★★★
人力で回る舞台の上、今日も繰り返される人の営みは、それだけで、ある時は人の命を救うことがある。
3年ぶりの再演。前回、石神をキャラメルボックスの西川浩幸が好演していましたが、
今回は同劇団出身の近江谷さんにバトンタッチ。
西川さんは、地味で寡黙だけれども善人そうな研究者、
近江谷さんは、地味で寡黙で狂気を隠していそうな研究者、という印象。
さらに近江谷さんは、ポスターやチラシの撮影後に、髪を短く(五分刈りくらい)切っていたので
見ようによっては、刑務所の受刑者のようにも見えて、少し怖い。
初演を観て、映画をDVDで観て、さらに今回観て最も感じたのは、当然ながら決して許せない石神の独善的な振る舞い。
純愛?献身?などとは決して思えない。
石神のしたことによって、結果としてより一層彼女を苦しめることになる。
(映画版では、映画の内容でも、宣伝でも、評判でも、静かな純愛を讃えているように感じて、あくまで自分が感じただけかもしれないが、許せなかった)
また、「人は生活しているだけで、誰かを救うことがあるのだ」というところ。
この話の中で、数少ない「救い」であり、暖かくて、何度観ても泣けてしまう。
出演者による手押しの回り舞台は、物語を人間が動かしている感じも良くて、
派手さはないのですがピンスポットが効果的な照明や、
また、さらに、ピアノと弦楽器による音楽が素晴らしい。
初演時には、劇場で迷わずCDを買いました。
静かで優しい。力強い。人間らしい…。
今も繰り返し、聞いてます。