満足度★★★
もっと絡みを
おそらく作者は、真面目で、この閉塞した世界を、なんとかしたい、なんとかならないかという好青年なのだろうと思う。
癒しを「目指した」劇である。
私自身、「明日から頑張って生きていこう」「なんと人ひとりひとりの人生は、重く、しかし尊いのだ」と、思えるような劇を、いつも希求しているから、この劇にも期待をもって、足を運んだ。
さて、この劇は、はたして成功したのだろうか、そう考えると、疑問符をつけざるを得ない。
まず、登場する人物同士に、関係性が感じられないこと。もちろん、主人公とのやりとりはあるものの、軽く、そして薄い。主人公のスタンスを揺るがすような人物は、残念ながら一人も出てこなかった。
次に、それとも関連するのだが、主人公の彼女は、何に寄って再生されたのか。私には、最後まで分からなかった。
弟くんの、最後に語る「手を繋ごう」発言なのか。ずっとそれを忌避してきた主人公が、簡単に、そんなメッセージで変わるとは、到底思えない。
これらの不満のもとは、どうやら脚本にあるようだ。
現実が描かれていないこと。
人と人とが絡み合っていないことではないだろうか。
内にこもった、遠くの、あり得ない声にしか、聞く耳を持たない彼女の再生は目の前の現実から目をそむけないこと。
これしかないのだと思う。
しかし、脚本は、それに応えられなかった。
心と心とを繋ぐ人間模様を描くことは、それこそきわめて難しいものである。
しかし、だからこそ、それを避けないで、観察し、観察し、考え、考えぬいて、ドラマにしてほしいのだと思う。
まだ若く、可能性に満ちた劇団。
たこ足配線で、熱くなった接続部分を、さらに熱くさせて、目も眩むような炎を発してほしい。