無伴奏ソナタ 公演情報 演劇集団キャラメルボックス「無伴奏ソナタ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    愛された天才
    久しぶりのキャラメルボックス。変に気取ってなくて面白かった。照明効果も五線譜のようなセットも良かった。

    男優5人のアフタートークも笑えた。左東の「花言葉」とか。砕けたネタも演劇のネタもあって残って良かったと思える。

    ネタバレBOX

    2歳時に受けるテストで職業を決められ、決められたルールを破ると「ウォッチャー」から罰を受けることになる世界、法は人の幸せにためにあり、絶対ということが骨子にある世界の話。
    作曲家(メイカー)として2歳から森の館に軟禁され、既成の音楽や人間とのつながりを絶たれたクリスチャン(多田直人)30歳に、メイカーの音楽を聴き判断する「リスナー」の一人(小多田直樹)が、君の音楽には足りないものがあると言って、バッハ「無伴奏ソナタ」の音源を渡す。ルール違反と分かっていても、不安から音源を聴いてしまったクリスは、メイカーを首になりエリートな人生から落ちはじめる…。

    『音合わせ』…OP
    『第一楽章』…家政婦のオリビア(岡内美喜子)が、荒々しい気性とクリスへの思いやりをみせるいいバランス。ピアノのくだりは笑った。クリスの音楽がバッハの影響をうけたことを論理的に解説するウォッチャー(石橋徹郎)が、ラスト「元メイカー」とわかるが、なるほどしっかりつながってる。
    『第二楽章』「ドライバー」になったクリスがバーに行くとそこにはピアノが。音楽を禁止されたクリスは、マスターのジョー(小多田)に促され弾くも、ウォッチャーにバレて指を切断される。ウェイトレスのリンダ(原田樹里)が見た目的にも話的にも面白い。多田の演奏が(映像を取り寄せただけあって)サマになってた。
    『第三楽章』「工事作業員」となったクリス。班の中に米国の懐メロ音楽好きのギレルモ(左東広之)がいて、一緒に歌い、「シュガーのうた」まで作曲してしまうクリスはウォッチャーに喉を潰されてしまう。メイカーとは一生関係しないであろうブルーカラーの中から生まれた音楽が世間に広がっていくのは確かに奇跡だ。
    『喝采』「ウォッチャー」が実は「メイカー」で禁を犯した者への罰ということが明かされ、クリスも「ウォッチャー」を長年務める。刑期満了後、自由になったが高齢で知り合いもいないクリスは、ある店で「シュガーのうた」を楽しげに歌う若者らと出会う。若者は、この作曲者は「よくわかってる」といい、自分の音楽へ万雷の喝采を受けるクリスは幸せを実感し、深々と頭を下げる。このラストシーンの演出がとっても上手い。

    一人の天才の一生をSFに描いた作品。禁止された音楽を求めては傷つき苦悩するクリスとクリスを愛するその周囲の人間たちの人間賛歌だろうか。法でバシバシ縛られる世界(現代の誇張か)に生きる人々があたたかくて良い。

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    2012/05/29 20:59

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