満足度★★★
アイデンティティ
痛みや忘却に注目している、との説明だったので、そのつもりで見ていたが、基本的には、都市に生きる者のアイデンティティ崩壊や、アイデンティティの危機を訴えても空振りしてしまうことに対する痛み。すれ違ってばかりいる他の人々との間にある絶望的な深淵を忘れる、忘れたいというムーブメントと解釈した。それをコンテンポラリーダンスを基調にして表現していたのである。未だ若いグループなので、コンセプトの甘さを克服し、コンセプトを中心に据えて、集約していく論理展開の甘さを解決できれば良かろう。ダンスには切れがあり、見せ所を作っていた点は評価できる。これからは、もう少し、照明や小道具にも工夫を凝らし、表現の中心を明らかにしながら、演出レベルの構成力も高めてゆければ良いのではないだろうか。
劇場の選択では、無意識に柔らかいもの、生命感のあるものを求めているような気配が感じられた。