満足度★★★
春爛漫!山田広野の活弁天国
前座としては最悪と言ってよいほどにつまらない(←本気で扱き下ろしてます)、月光亭の落語モドキのせいで、果たしてこれから先の“濃い”1時間半を乗り切れるだろうかと不安に感じたが、三つ揃いにハンチングの、いつもの「活弁」スタイルの山田氏が登場すると、沈滞していた会場の雰囲気もさっと明るくなる。あとはいつもの下品で脱力系のとことん下らない(←こちらは誉め言葉です)、自主短編映画の数々、これに山田氏が、だみ声だけれども明るい作り声で、ナレーションを付ける。
正直なことを言えば、たいして笑えないネタ、作品も結構ある。しかし、山田広野の場合、笑えない、面白くないというのが、決して貶し言葉にはならない。素人が作ったとしか思えない(と言うか監督も素人なら出演している役者も実際に殆ど素人なのだが)チープさ、適当さと言うよりはいい加減さ、これが観客の脳髄をクラクラさせるドラッグ的作用を施すのだ。観ようによっては、山田広野は現代における最も先鋭的なアングラパフォーマーであるかもしれない。
しかし、毎回思うことだが、映画の楽しさを、山田氏のMCが台無しにしてしまっている、とまでは言わないが、いささか足を引っ張っている嫌いがないわけではない。映画はバカだが、山田氏はバカではない。基本的に理知の人なので、映画を作るまでの「解説」が映画の「計算されたバカ」を暴露してしまうのだ。「みせたがり」が本質で「かたりたがり」の方は不得意だということなのかもしれないが、「活弁」を名乗る以上は、多少は合間の語りにももう少し熟達してほしいと思うのである。