かたりたがりのみせたがり 公演情報 かたりたがりのみせたがり」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.5
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  • 満足度★★★

    春爛漫!山田広野の活弁天国
     前座としては最悪と言ってよいほどにつまらない(←本気で扱き下ろしてます)、月光亭の落語モドキのせいで、果たしてこれから先の“濃い”1時間半を乗り切れるだろうかと不安に感じたが、三つ揃いにハンチングの、いつもの「活弁」スタイルの山田氏が登場すると、沈滞していた会場の雰囲気もさっと明るくなる。あとはいつもの下品で脱力系のとことん下らない(←こちらは誉め言葉です)、自主短編映画の数々、これに山田氏が、だみ声だけれども明るい作り声で、ナレーションを付ける。
     正直なことを言えば、たいして笑えないネタ、作品も結構ある。しかし、山田広野の場合、笑えない、面白くないというのが、決して貶し言葉にはならない。素人が作ったとしか思えない(と言うか監督も素人なら出演している役者も実際に殆ど素人なのだが)チープさ、適当さと言うよりはいい加減さ、これが観客の脳髄をクラクラさせるドラッグ的作用を施すのだ。観ようによっては、山田広野は現代における最も先鋭的なアングラパフォーマーであるかもしれない。
     しかし、毎回思うことだが、映画の楽しさを、山田氏のMCが台無しにしてしまっている、とまでは言わないが、いささか足を引っ張っている嫌いがないわけではない。映画はバカだが、山田氏はバカではない。基本的に理知の人なので、映画を作るまでの「解説」が映画の「計算されたバカ」を暴露してしまうのだ。「みせたがり」が本質で「かたりたがり」の方は不得意だということなのかもしれないが、「活弁」を名乗る以上は、多少は合間の語りにももう少し熟達してほしいと思うのである。

    ネタバレBOX

     前座の月光亭、四人の女性が代わる代わるに、あるいは台詞を重ねて、輪唱するような合唱するような調子で『饅頭こわい』を演じるが、初心者の落語家が陥りやすい落とし穴に、しっかりハマってしまっている。
     落語は「芸」であって「演技」ではないということが理解できていない。どの演者もテンポはいいが、それは役者が勝手に思いこんでいるテンポであって、「観客のためのテンポ」ではない。観客との間に「阿吽の呼吸」を作らないまま演じているので、客からは彼女たちが自分たちを置いてきぼりにして、「ひとり」で喋っているようにしか聞こえない。落語の前座で、下手な人、座布団を引かれて中ほどまでで引っ込んじゃった人を寄席で何人も観てきたが、これは開始後3分で引っ込まなきゃならないくらい、最低の前座である。一応、噺は定番の「お茶が怖い(=お茶がほしい)」で終わるが、そのあとに「お客さんの拍手が怖い(=拍手を頂戴)」と付け加えるとは下手くその癖に、思い上がるのも甚だしい。それが客をバカにした態度だと謂うことに気付かんのか。
     客席でも全く笑いが起きなかったが、本人たちは「巧く演じているつもり」らしいのが失笑ものである。余計なお世話ではあるが、このように落語を根本的に勘違いしているようでは、到底、これから先の芽はないから、さっさと亭号は捨てて本名に戻り、普通に俳優をやってた方がまだマシなんじゃなかろうか。

     今見たものはなかったことにして(そうアタマを切り換えなければその場にいられない)「本編」の山田広野の登場を待つ。
     今回の会場、例年のイスを並べただけの観客席ではなく、テーブルが設えられていて、後方には簡易バーがあり、枝豆やお菓子などの軽食、ジュースやカクテルなどの飲食が可能になっている。嬉しい試みだが、映画を観ている最中に枝豆をぽりぽり食うわけにもいかないので、合間に慌てて口の中に頬張る羽目になる。別に必要なサービスでもないのではないかな。

     記憶だけで書いているので、抜けるネタもあると思うが、最初の映画は、山田氏の人気シリーズ、『実験人形ダミー・オズマー』の新作。もちろん元ネタは小池一夫・叶精作の漫画『実験人形ダミー・オスカー』なのだが、もうお客さんを常連と踏んでいるのか、山田氏、一切の解説をしない。
     嫉妬深くて優柔不断な彼とソックリの別人に、うっかり付いていってしまったヒロイン。しかしその別人さんはヒロインの初恋の相手だった。自分の彼女が、自分によく似た男と仲良さそうに喫茶店に入るのを見て、怒りに狂った彼氏は、そっくりさんをぶん殴る。しかしそれはダミー・オズマーが二人の仲を結ぶために用意したダッチワイ……もとい、実験人形だった! という落ち。
     今どきのダッ○○○○は、人と見間違うほど精巧なものも多いが、ダミー・オズマーが使っているのは風船式の旧型。それがなぜかリアルな人間に、しかも老若男女なんにでもなれるのがいい加減。オズマー役のホリケンさんは、他の映画にも一応出演している役者さんらしいのだが、濃い顔なのに殆ど見かけたことがない。山田氏の話によると「背中だけ写っていた」パターンが多いそうだ。

     山田氏が上海だったかどこかで貰ってきた漢方薬のチラシ。頭痛や胃痛など、様々な病気に効くことが、イラスト入りで説明されている。その絵を適当に組み合わせて、勝手にドラマをでっち上げる。結果、二人のOLの間で不倫に悩むハゲ(カツラ)の上司が、結局二人ともに振られてしまうが、それは二人がレズだったから、というむちゃくちゃなストーリーに。
     全てのイラストを使わなければいけないから、上司がハゲでくしゃみをしたらカツラが飛ぶという、無理やりな展開をするところが面白い。

     これもシリーズ、人呼んで「版権無視シリーズ」。
     昔々、「少年チ○○○○○」に掲載されていた、あのドギツイ絵柄の、昔は二人で一人の名前だったマンガ家さんのオカルトマンガが下敷き。つか、そのイラストをまんま使っているから、著作権侵害は承知の上。ダミー・オズマーみたいにパロディにすればいいものを、わざと訴えるなら訴えてみろな挑発的なことをやらかすのが山田氏の悪趣味なところ(←だからこれも誉めてるんですってば)。
     主人公のマ太郎くんは、その恨みがましいご面相のせいで女の子に全くモテない。ところがなぜか今回は、両手に花で、美女を二人もはべらせている。けれども二人の女から口を吐いて出た言葉は、「臓器売らない?」逃げるマ太郎を助けた第三の女、しかしこの女も「もう日本にはいられないでしょ、波止場で船が待ってるから!」。
     女たちに騙されたと知ったマ太郎くん、得意の「恨み念法」で、金の亡者の女たちを、みんなお札に換えてしまったのでした。
     毎回、「女がらみ」なのが、原典の中学生からオトナになったマ太郎くんのルサンチマンの強さ、業の深さを感じさせて、笑えるけれども切なくなります。

     今回、白眉だったのは、友人に頼まれて作ったという、結婚披露宴での「二人の出逢いビデオ」。
     普通は、二人のアルバムなどを元にして作るものだろうが、山田氏は完全再現ドラマとして、役者を使ってドラマを作る。けれどもその内容が全てでっち上げ。「二人は店のマスターと客だった」ということだけ聞いて、あとはお嫁さんを勝手に「男の尻フェチ女」にし、恋のライバルに別の尻フェチ女と尻フェチ男(笑)を配して、3人バトルを繰り広げる。最終勝利は、お婿さんの犬が決めたといういい加減な落ち。
     実際に、披露宴で流したところ、尻フェチ女にされたお嫁さんのご家族はかなり立腹されたそうだが、瓢箪から駒、あとで山田氏が聞いたところによると、このお嫁さん、本当に尻フェチだったそうだ。関係者がこの映画を見た時の反応を想像しながら見ると楽しい一本。

     ほかにも、居酒屋の臨時店員になった女たちが借金取りを始末していく話とか、少女雑誌のモデルになったヒロインがポルノを撮らされてしまう話とかもあったが、長い(と言っても10分程度)作品になると、脱力し続けるのにも疲れてしまう(苦笑)。
     殆どの作品がワン・アイデア、くだらない一発ギャグみたいなものだから、それを面白く見せるためには、あまり長く撮らない方がよかろうと思う。


     山田映画はアイデアとそのチープさがうまくハマると面白い。しかし単にチープなだけに終わる作品も少なくない。先述した通り、MCが説明的すぎると作品自体がつまらなく見えてくるし(妙に自作を卑下して語るのである)、MCの時くらい、だみ声の作り声でなく、普通に喋ればいいのにとも思う。今回は、後方のバーのところに何度も「飲みに行きたいがガマンする。みなさんは飲んでていいんですよ」と繰り返していたのが客席の空気を読めておらず、鬱陶しかった。

     自主映画と言えば、知る人ぞ知る存在であろうが、『聖ジェルノン』シリーズや『浅瀬でランデブー』などの驚異的な“天然”作品で、観客を茫然とさせ続けている伊勢田勝行監督がいる。
     完全なド素人で、ドラマ作りも画面作りも糞もない駄作しか作れないのに、なぜか観客の爆笑を呼んでいるあの破天荒さと情熱、まだまだ理に勝ちすぎている山田氏に必要なものはあの伊勢田監督の天然さなのではないのかとも思う。
     もっと天然になって、それで客が来るかどうかは分からないが(苦笑)。
  • 満足度★★★★

    下ネタ
    この淫靡なささやきが楽しい♪ 出会い系のなんたるかをじっくり
    勉強した気になった。 オープニングアクトの月光亭落語会も
    楽しかった〜〜〜やっぱりかぶりつきよね、こういうイベントは(^o^)v

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