国境のある家 公演情報 劇団青年座「国境のある家」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    知識人向きの演劇
    ある三世代家族のお話。

    皆が家族にそれなりの愛情を感じている、ごく普通の一家。

    でも、皆が、言えない秘密を抱えていた。

    具体的な内容は、全く似てはいないのですが、山田太一さんの「岸辺のアルバム」とか「それぞれの秋」などを思い出しました。

    斜形の柱が、照明によって、色を変え、部屋や、山林や海岸に、瞬時に姿を変えて見える装置が、美しく印象的でした。

    父親役の大家さんの演技がこの上なく秀逸。

    津嘉山さんの祖父が、家族を諭す自論には、並みの評論家よりも遙かに説得力があり、思わず身を乗り出して聞き入ってしまいました。

    娘役の三枝さんの演技が、ややテキストをなぞられている感じで、自然でない点が残念に思えました。

    ネタバレBOX

    冒頭からしばらくは、やや退屈に感じました。

    台詞も、作者の書いたものという印象が強く、やや鼻白む展開。

    でも、中盤で、娘がアメリカ人との結婚話を持ち出してからは、物語が濃密になります。

    ただ、このストーリーの背景を理解するには、観客側にかなりの教養が必要です。

    アメリカ大統領のアンドリュー・ジャクソンや、60年安保の樺美智子さんの死や、「三人姉妹」の粗筋や登場人物、徳富蘆花の知識、アメリカと日本の関係、ありとあらゆる知識がないと、チンプンカンプンになりそうな気配も感じました。

    せめて、当パンに、用語解説などがあれば、親切ではと思うのですが…。

    それにしても、祖父の話す「日本は、アメリカの属国論」、本当に、そうだなあと、実感して、虚無的な気持ちになりました。

    祖父と祖母、どちらが、相手を思いやって、呆けた振りをして、合わせているのかは、最後まで明らかにされませんが、もしかすると、お互いに、少しづつ、変容しているのかもしれません。でも、この家族には、基本的に、お互いへの愛がたくさんある、理想的な家のように思えました。

    それだけに、最後の「国境のある家」という台詞には、作者の創作上のこじつけめいた感じがあって、やや、無理に風呂敷を畳んだような違和感を感じました。
    夫婦も、お互いに、同じ日、同じ場所で、デモに参加した過去があったことを知り、共感したり、一人の男と関係した姉弟も、呆けの兆候のある老夫婦も、家族全員、理解し、支え合っていて、むしろ、私には、国境のない家に思えました。

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    2012/04/27 02:54

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