満足度★★
バレエファンとしては…
20世紀初頭に活躍した伝説的なバレエダンサー・振付家、ヴァーツラフ・ニジンスキーの半生をニジンスキーの妹が回顧する形で描いた作品で、ダンスは勿論のこと、歌もあってミュージカル的でした。
今年、東京バレエ団のニジンスキー特集と、バレエ・リュスの伝統を受け継いでいるモナコ公国モンテカルロバレエ団の公演を観たことと、振付が平山素子さんということで期待していたのですが、作品としてまとまりきっていないと思いました。
ニジンスキーが興行師のディアギレフに見い出され、バレエ・リュスで活躍した後に精神を病んで死ぬまでが、ニジンスキーの兄、妹、妻、妻の不倫相手でもある医師、ディアギレフの台詞を通じて描かれ、ニジンスキー自身はあまり台詞を喋らず、ダンスで表現する構成でした。
『薔薇の精』、『ペトルーシュカ』、『牧神の午後』、『遊技』、『春の祭典』等の代表作がオリジナルの振付を引用しながら踊られていて興味深かったです。
ニジンスキーやバレエに馴染みがない人でも分かるように配慮した説明的な台詞が多い、親切な作りでしたが、あまりニジンスキーの独創性が伝わって来ず、ドラマとしての流れも悪くなっていました。
『牧神』のエピソードに比べて『春の祭典』のエピソードはほとんど触れられなかったのはニジンスキーを語る上でバランスが悪いと思いました。
カンディンスキーあるいはクレー風のグラフィックが施された、両サイドの大きな箱状のセットや黒幕の開閉で一部だけが見え隠れする背後の壁や具象的な柄の照明等、ビジュアル的な演出に必然性も効果も感じられませんでした。
ドビュッシーやストラヴィンスキーの曲をアレンジした音楽も原曲の良さが殺されているように感じました。ヴァイオリンとヴィオラだけ生音で他は打ち込み音源のトラックに違和感がありました。オーボエやチェロも本物の楽器の音で録音して欲しかったです。
第2幕の後半、舞台から捌けた役者のマイクの音量を落とし忘れたのか、舞台監督が舞台裏で指示を出しているらしき声がスピーカーから聞こえていて、気になりました。