佯狂のあとで 公演情報 IDIOT SAVANT theater company「佯狂のあとで」の観てきた!クチコミとコメント

  • 大いなる疑問
    しかし、これは一体なんなのだろう。映像の世界でも、文学の世界でも、まだそれを直接的に描くことを躊躇しているのに、この劇団は先の東日本大震災をネタに稚拙な舞台を作り上げてしまった。この作者の罪は、万死に値すると思う。

    ネタバレBOX

    芝居は、横浜の曹洞宗の寺、貞昌院で行われた。客席は対面式で舞台の両端に映像を映すためのバネルがある。映像はたぶん合成だと思うが、被災地の瓦礫の中を役者たちが行進したりするもので、その意味は不明である。ひとつのパネルには能面が3つ吊るされていて、時おり一人の役者がつけるが、ただお飾りとしての装着で、それで演技をするわけではない。メインは剃髪の男と、猿のようなダンスを繰り返す女で、あとはコロス的に存在する役者が7人。ストーリーらしきものはなく、エピソードとして津波で死んだ者を抱きかかえて嘆いたり、死臭の漂う街の匂いについて語ったりしているが、それらがすべて絶叫芝居でまくし立てられる。役者たちは被災者たちに共感して演じているのだろうが、去年の3月11日以降、われわれがずっと見続けてきた映像などの情報を越えるものではなく、今さら下手糞な役者が現実にあった悲劇を再現しても、信じられるものは何もなく、逆に不愉快きわまりない。
    そして、信じがたいことに突然ヒトラーの演説が挿入され、ホロコーストについて語られる。震災での大量死とナチズムの残虐行為である大量殺戮を作者は平然と並べるが、死ということ以外に何の共通点もない。この無神経な並列で、多くの死者たちを冒涜しているということを、馬鹿な作者は分かっていないのだろうか?
    まず、この作者であり、演出家である恒十絲という輩に問いたい。この芝居を果たして被災者たちに見せられますか? 実際に目の前で肉親たちが無残にも死んでいった被災者たちが、この下手糞な芝居を見て、何を感じると思いますか?
    存在してはいけない芝居というものはないという信条で、年間百本以上の芝居を見てきたが、この芝居が私の信条を打ち壊した。存在してはいけない芝居というものはある。
                                           

    0

    2012/02/18 13:24

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大