満足度★★★★
ダンスを生かすということ
ダンスだけの公演は苦手だと改めて感じました。私は現代美術からダンスの世界に入ってきた人間なので、コンテンポラリーやマイムが苦手なのです。
それを踏まえて感想を読んでいただければ幸いです。
この公演では、ダンス以外のインスタレーション、しかも、動きにぴたりと合わせた緻密な生演奏がカラスに変化していくジョセフの美しい動きに、さらに躍動感をプラスしているように感じました。本当に本当に緻密で、相当な時間の稽古があったことでしょう。お疲れ様です。
もちろん、ジョセフが、カラスに変化するのを苦悩するシーンの動きはさすが、ダンス!と思えるほど美しかったのですが。
また、現代美術でもよく使われる、影やスプレー、ライトアップされたスクリーンなども、効果的に演出されていたと思います。
彼が日本で感じた、カラスたちの、群れ、羽音、そして生命力が様々な方法で表現され、カラスが害鳥とされる東京(だけですよね?確か)とは、また違ったアプローチで捉えられているのが、非常に興味深く、自分にとっての、カラスへの見方が変わったのかなという気がします。
それというのも、私には息子が居るのですが、彼はミニカーがとても好きで、家にとてつもない量のミニカーがあり、それの名前を呼べと言われるのが、もはや日課になっています。
その所為なのか、街で清掃車やパトカーや救急車を見ると、昔は汚いもの、不謹慎なもの、に感じていた気持ちがスッと抜けてしまい、「そういうもの」という感覚になった経験からです。
今回の舞台を見て、カラスが「害鳥」であるという先入観がスッと抜けたように思いました。