ダッチプロセス 【ご来場ありがとうございました!】 公演情報 ナカゴー「ダッチプロセス 【ご来場ありがとうございました!】」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    これは好きかもしれない
    初めて観た。
    変な感じがずっと続く。
    単純なコメディとも言えず、笑いもどんどん引きつっていく感じ。
    「嫌な感じ」がもっともっと増大してもいいのではないだろうか。
    もちろん「意味」のある範囲内で。

    ネタバレBOX

    モスバーガー荒川車庫前店の店長が、突然大きなハンバーガーになってしまった。
    というオープニングはとてもナイスだ。
    それを巡ってのドタバタになっていくのかと思いきや、後半がまったく違ったテイストになっていく。

    登場人物の置き方がなんか微妙に変で、そこに何かあるな、と感じさせる。執拗で粘っこく身体にまとわりつく感じが単なるコメディとは違う臭いを放つ。

    前半の展開でも、それは見え隠れしていたが、後半は、それがモロに噴出していた。
    その感じが好みかもしれない、と思った。

    ただ、前半のちょっとコメディですよ的なテイストと後半の内面にどんどん潜り込むようなテイストは、結び付きがあまりにも弱く、これが完全に一体となったり、あるいは、完全に別モノとして存在したのならば(もちろん、別モノと存在させるためには、それ相応の観客への説得は必要だが)、相当面白いことになっていったのではないかと思うのだ。

    後半の美智子が「死ぬのが怖い」と言い出してからの堂々巡りは、ちょっと鳥肌モノだった。「死への恐怖」という具体的なものではなく、「外に出られない理由」探しのひとつであり、今の世の中が孕んでいる、精神的な疾患の根源を見せつけられるようで、とても嫌な気分にさせてくれる。
    美智子が「嫌だ、嫌だ」と泣き叫ぶほどに、嫌な感じは増し、それが観客の深いところを刺激する。
    この感覚はとてもいいと思った。誰かの内面が吐露されているような感覚で、内臓を見せられているような嫌悪感がある。

    だからこそ、そのようなラストに至るまでのプロセスがとても大切だというのはわかるのだが、「ラスト」はやっぱり「ラスト」なので、そこも大切にしてほしかったという思いがある。
    すなわち、あの執拗でねちっこく、イヤだイヤだと駄々をこねていた女が、ラストに動くというのには、やはり理由が必要で、あれだけ延々引っ張ってしまうと、ポンと落とすには微妙すぎるので、相当な理由(オチ)が必要になってきてしまう。
    当然観客はそれを期待せざるを得ない。
    しかし、実際は肩すかしでもなく、それなりの理由でもない、かなり、あれれ…なオチであった。

    これは、それについて考えるのを止めてしまったようでとても残念。もっと考え抜いて何かを絞り出せたら、凄い演劇になったような気がする。そしたら、底のほうで流れているモノに共感できる一瞬があったのではないだろうか。観客は「正解」がほしいわけではない。あなたたちが「考え抜いた答え」が観たいのだ。
    それはコメディだってもちろんそう。

    笑えればいいということではあるが、それにもキチンとした道筋がほしいということだ。キチンとした道筋というのは、論理的で、ということではなくて、「考え抜いたこと」ということだ。

    役者は、店長の篠原正明さんの濃さがいいのだが、やっぱり、美智子役の川上友里さんの凄さが一番印象に残る。このどうしようもなさが、どっかに突き抜けてくれさえすれぱ、と思ってしまうのだ。

    あとハンバーガーを粗末に扱うというのは、観客の神経を逆撫でするようでとても微笑ましい。それがきちんと後半の、あのイヤになるほどの堂々巡りと共振するように組み立ててあれば、食べ物を無駄にするという行いも生きてきたのではないだろうか。
    結局舞台の上の消えモノは、たとえ食べたとしても、それは食事ではないので、「無駄にしている」という点では、食べずに放り投げると同等な扱いなのだから。
    もちろん、観客の受け取る気分としては別なのだが、その「気分」(嫌だったり、美味しそうだったり)を食べ物で演出するということにおいては、食べても食べなくても同じではないかと思うのだ。本当に食べてたとしても、演出がうまくなければ、食べ物は生きてこないからだ。

    ナカゴーはちょっと気になる劇団になった。

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    2011/10/31 14:12

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