満足度★★
主役が残念
イギリスの言語学者が下流階級の女性を上流階級の人であるように仕立て上げ、感情のすれ違いが起こるビターなシンデレラ・ストーリーでした。
この戯曲を基にして作られたミュージカルの名作『マイ・フェア・レディ』と比較すると(オードリー・ヘップバーン主演の映画版しか見たことがありませんが)、クオリティに疑問が残る公演でした。
具象的な舞台美術やしっかりと作り込まれた衣装が美しい、奇をてらわないオーソドックスな演出の会話劇でしたが、物語の中に織り込まれた階級制度や女性蔑視に対する視点をもう少し強調した方が立体感のある作品になったと思います。
転換時に流れるビートルズの曲は下流階級から上流階級へというストーリーに合致したコノテーションとして機能していて、巧い演出だと思いました。
主演の市川知宏さんは噛むことが多く、滑舌も良くなくて文節毎にクシャクシャと早口に喋っては間を空ける台詞回しが聞いていて不快でした。普通の若者の役ならまだしも、今回演じたヒギンズ教授は言語学の音声学における天才という設定なので、全然説得力がありませんでした。普段はもっと毅然としたイギリス紳士らしさがないと、最後の台詞も活きてこないと思います。せっかく他の役者達は充実した演技をしていたのに、そのアンサンブルを壊してしまっていて残念でした。
イライザを演じた高野志穂さんは粗野な花売り娘からエレガントな貴婦人に変化していく様を上手く演じていていました。華やかな世界の中で不安を感じている様子が表情や立ち振る舞いに丁寧に表現されていました。
浦嶋りんこさん、尾藤イサオさんのアカペラ独唱が見事でした。
2011/09/03 23:12
2011/09/03 10:13
2011/09/02 14:09
ご返信ありがとうございます。
もちろん、私も、主役の方には非はないないのではと想像しました。
おっしゃるように、制作側の問題でしょう!
昔の演劇界の事情を良く知る人間として、最近は、本当にその道のプロが制作サイドにいなくなったという印象を受けています。
それがとても残念でなりません。きっと、この風潮は演劇界に限らないことでしょうけれど…。