ゲゲゲのげ ~逢魔が時に揺れるブランコ~ 公演情報 オフィス3〇〇「ゲゲゲのげ ~逢魔が時に揺れるブランコ~」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    傑作戯曲で「今」の観客を魅了する
    上演時間2時間40分休憩なし、と聞いて思わず「ゲゲゲのげ」となったが、終わってしまえばあっという間。
    とにかく物語が面白い。傑作戯曲!
    台詞が楽しい。味わいも深い。
    歌がいい。音楽は生演奏だ。

    ネタバレBOX

    老婆が病院のベッドに横たわる。それを囲む家族らしい女性たち。会話が変な方向へずれ始める。

    小学校の教室。
    同級生だけでなく担任からも疎まれ、イジメられているマキオという男子がいる。
    今日も給食係で失敗をして、廊下に出され、食べ終わるまでそこにいろ、と先生に言われて、廊下で1人給食を食べる。
    翌朝、マキオが教室にいない。まだ廊下で給食を食べていることに気づき、またイジメられる。
    その時、チャンチャンコを着た、鬼太郎が歌いながら現れ、マキオをいじめている同級生たちを蹴散らす。鬼太郎はマキオに呼ばれて助けにきたのだ。
    そしてマキオをいじめていた同級生たちは、ついに本性を現すのだった。

    こんなストーリーが展開されていく。

    物語の展開には目を離せない。一体どうなるのか、と思いつつ、舞台に釘付け。
    休憩なしの2時間40分なのに長さを感じないのだ(ストーリーを知っていても)。
    それは、「どう見せるか」がきちんと計算され、演出しているからであり、観客としてその術中にぴたっとはまっているからだ。
    人と人のつながり、関係が進行とともに徐々に見えてくるうまさがある。
    それを見せる「台詞」がいい。濃厚であり、饒舌であり、芳醇なのだ。その台詞や演技には「行間」がある。むしろ饒舌にしているのは「行間」を作るためと言ってもいいかもしれない。行間があるから物語が観客の中で膨らむのだ。そして、どこか猥雑さもきちんと残してある。この塩梅が巧み。

    小学校の教室が舞台に「わっ」と現れる。ビワの実を想起するようなオレンジ色の衣装を纏った小学生たちで溢れる。このけたたましさがたまらない。
    ただ勝手に動いているのではなく、きちんとコントロールされているから、雑然とはしないところがうまい。

    そして、鬼太郎の登場!
    鬼太郎に扮した中川晃教さんの登場には、会場から思わず拍手が出るほどカッコいいのだ(もちろん拍手の主は熱烈的ファンだろうが)。以前観たときもこの登場シーンには心が躍った。
    『ロッキーホラーショー』のフランクフルター登場シーンをどこか彷彿とさせる(笑)。
    そして、中川さん、さすがに歌がうまい。さらに、舞台上で映えるというか、オーラがあるというか、とにかくいいのだ。

    鬼太郎と小学生の大立ち回りが楽しい。
    また、木などとして登場する役者たちのフォーメーションがとても気持ちいい。びしっときまっているからだ。

    かつて観て、いまだにサビを覚えている劇中歌が聞けて感激した。
    確かに、歌は増えたが、「音楽劇」というほどではなかったが。
    一部台詞を変えたところがあったようだが、どうやら大きくストーリーは変えてないようだ。
    面白いモノは、そう簡単に古びてこないものだ。
    あるいは「今」に蘇らせた手腕のなせる技なのか。

    舞台も客席もすべてを見事に使い切り、会場が熱気にずっと包まれているような一体感まであった。

    役者は、メインの中川さん、広岡由里子さん、馬渕英俚可さんが印象に残る大熱演だった。そのほかの若手の役者さんたちも、全身で演技をしていて好感度は高い。村松武さんもうまいなぁと改めて思うし、渡辺えりさんもさすがに面白い。

    見終わった直後に「もう1回、いや2回、3回観たい!」と心から思った。「行間」があるので、観た回数だけ楽しめると思うのだ。
    合う日程がないのが残念すぎる。

    帰宅してから、大昔に買っていた戯曲を引っ張り出して読んだりした。

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    2011/08/13 08:00

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