ケージ 公演情報 ミームの心臓「ケージ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    全共闘世代へのレクイエムは合わせ鏡−−ケージ、形似、そして啓示
    なかなか面白い着想と展開。
    これからが楽しみな劇団だ

    ネタバレBOX

    単なるSF仕立てで全共闘についてを考察するのではなく、そこに「形似」している自らを投影させた面白さがある。

    過去と未来が、3対3と対になる設定で、もちろん単純にイコールとして結び付けるのではなく、現代の心情が合わせ鏡のように提示されていた。
    「自分が言ってほしいこと(投げかけてほしい言葉)」あるいは「自分に対して潜在的に思っていること(他人からこう思われているんじゃないかということ)」を過去の相手に投げかける。

    全共闘世代へ投げかけるコトバは、すなわち鏡に映った自分へのコトバでもあるのだ。

    全共闘世代へのシンパシーがあるのだろう。そしてその根底には、「敵」が明確であった時代、「共闘」の「共」が存在する時代へのジェラシーや憧れがない交ぜになった感情もあるのではないだろうか。
    そのスクリーンに「今」の自分たちの姿を投影してみせる。

    今の自分たちは、後の歴史に存在するという意識があるので、まるで何もかも知っているような錯覚に陥り、過去に存在する全共闘世代の彼らに、まるで意見するような言葉を投げかける。
    しかし、それは、自らの「今」へ投げかけている言葉であり、それに気がついていくのだ。
    たぶんそういう構図があっての作品ではないかと思うのだが、「過去」は「未来」、つまり「現在」につながっていくことを運命づけられているのだが、「現在」からの「未来」につなげていくことの覚悟までには達していないように感じた。

    つまり、あくまでも「現在」は「過去」が創り上げてきたものである、という立場にしかないように見えたのだ。

    これだと、過去への郷愁と憧れのラインをあまり出ていかないのではないだろうか。
    それは、この作品を創り上げるために、いろいろなことを調べて、さらにあの時代(全共闘の時代)への共感を強めてしまったことによるのではないだろうかと感じた。
    それを避けるためには、今回の再演にあたって、頭に留めたモノをいったん捨てるぐらいの姿勢で臨むぐらいが丁度よかったのではないだろうか。答えは出ていない、という気持ちで。
    過去のトレースに気を遣いたいのはよくわかるのだが、一度捨てることによって、「自分に降りかかる」ということをもっと意識した作品にすべきだったのではないだろうかと思う。

    「ケージ」を具体化したセットはなかなかだった。
    若者は、いつの時代もケージの中にいて、その中でもがいているのだということの象徴であり、そこから抜け出るのには、せいぜい「死」しかないのだという考えとして見たのは、深読みのしすぎか。

    「ケージ=形似」というところの着眼点はとても面白いと思った。さらにそこへ「啓示」までプラスしてくるのだが、これは少々余計すぎた感がある。そこまでの膨らみはなかった。

    残念だったのは、全体的に説明がすぎる点だ。役者は考えを言葉のみで伝えるスピーカーという位置づけに留まり、会話は、次の言葉(説明)を促すためのきっかり(&合いの手)にすぎないように見えてしまった。
    しかも、その役者たちも、存在が不安定であり、舞台の上に壁を作ってしまった。役者は「台詞を言う人」ではなぐ「そこに生きる人」であり、舞台、芝居の可能性と「力」を、作・演はもっと信じてもいいのではないかと思った。
    もちろん役者の技量アップが前提ではあるのだが。

    これは個人的な感覚なのだが、物語の中核をそのまま理解すると、全共闘世代の人たちがあまりにも物わかりが良すぎる。
    闘争を一歩進めた彼らのような、ゴリゴリの人たちは、コンクリートで塗り固めたような自意識の中にいて、そう簡単に共感してこない。そして、自らの理論、主張を押し付けてくる存在ではなかっただろうか。
    その固さがあった上での、そこへのヒビのようなものを、現代の同世代の若者が開けた、という感じがあれば言うことはなかったと思った。
    全共闘世代ではないのだが、私が学生だった頃に、その生き残りで運動を継続していた人たちを見ると、狂信的と言っていいほどの怖さがあって、絶対に相手の言葉には耳を傾けず、「言葉(理論)では絶対に負けない(譲らない)」という姿を見たからだ。

    本来の意味合いが変わってしまうのたが、このストーリーのまま、全共闘世代の台詞をリアル全共闘世代の作家が書いて、現代と対決させたら面白いんじゃないかと勝手に想像した。
    現代の学生が、な〜んにも考えてない学生だけだったとしても、ギャップのあるぶつかり合いが演出できたのではないか、なんてことも。

    それにしても、「ミームの心臓」これからが楽しみな団体である。

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    2011/08/08 07:54

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