満足度★★★
理想と現実
学生運動が盛んだった60年代後半の若者と現代の若者が時間を越えて出会うというSF的状況の中、お互いの考え方の相違を認め合う物語で、異なる時代の若者を対照的/対称的に描く、力のある作品でした。
とある山荘に隠れるためにやって来た男2人・女1人の学生活動家と、旅行でやって来た同じく男2人・女1人の計6人の組み合わせを変えながら政治思想を中心に恋愛や友情が描かれていました。それぞれの人物の性格付けがはっきりしていて、激しい議論から悪戯っぽい会話まで色々なタイプの対話があり、メリハリがありました。
プロットは良かったのですが肉付けして戯曲にする際に、感情面を含めて説明的な台詞を入れ過ぎていて観客の想像に託す余白がないように思いました。せっかく役者が舞台で演じるのだから、言葉だけでなく佇まいや動作から感情を伝えて欲しかったです。
ある有名な事件にリンクさせる着想は面白かったのですが、それに絡む話の展開がいまいち理解できませんでした。
当日パンフレットに「音楽・演奏」と記されていたので、おそらくオペブースでキーボードを弾いていたのだと思いますが、姿が見えず、しかも生楽器ではなかったので、生演奏である意義が感じられず、もったいなく思いました。
鳥籠を模した美術に雰囲気があって良かったです。特に開演までの間、仄かに照らされている様が美しく、これから何が起こるのか期待させられました。